ドラクエ7冒険記 <さくさくDQ劇場

FILE:58「あの娘とスキャンダル」
リンダの所に行く前に、ボルックが気にしていたのでイワンの様子でも見てみようと思って屋敷2階に。イワンの自室には鍵がかかっていて、何やら話し声が聞こえる。反射的に耳を済ましてしまう俺達。当然、マリベルは真剣に扉に張り付いて聞いている。
最初に聞こえて来たのは、メイドのカヤの声だった。
「ずいぶんお疲れのようで。またリンダの事であれこれ悩んでいるのかしら?」
「すまんが一人にしてくれ。考え事は一人になった方がはかどるっていうだろ」
イワンの声もする。お前ら、なんで部屋に鍵かけてんですかちょっと。
「や、やめてくれよカヤ!」
「ふーん、あらそう。でもリンダとペペだって、これくらいやってるわよ」
「デタラメ言うな!」
だから何してんですかお前ら。やだな気まずいな。でもこの場を立ち去る事は出来ない(マリベルのせいで)。
「じゃあ、しょっちゅうリンダがペペのいるハーブ園に通うのはどうしてだか、お分かり?」
「ハーブが好きだからだろ」
「おめでたい人ね。好きなのはハーブではなくて、ハーブ園にいるペペではなくて?」
カヤのその言い草に、ついにイワンがキレた。
「いいかげんにしろよ。そんな事がお前に分かってたまるか。リンダがオレを裏切るなんて絶対にない。絶対に絶対に絶対にだッ!
と、何の根拠もないくせにやけに自信たっぷりに宣言すると、奴は突然部屋を飛び出て行ってしまった。ドア付近にいた俺達には目もくれない。あー驚いた。
「許すまじイワン。二股をかけていたなんて、全ての女性の敵だわ!」
今度は話を聞いていたマリベルが、拳を握りしめながらブチ切れる。何気なくそばから離れる俺。
「熱くなるなよ。たぶんあのメイドとは、今はもう何でもないんだよ」
「うっさいわねバカ王子。なんでそう言い切れるのよ。知りもしないくせにッ!」
キーファのなだめも逆効果だ。どうやらマリベルの中でイワンは「超一級最低男」に指定されちまったみたいだな。
ふと見ると、部屋の奥にはカヤが一人佇んでいる。俺と目が合うと、彼女は寂しげにこう言った。
「かわいそうな人がいると、自分が助けねばならないと強く激しく思い込む。イワン様の悪いクセなのよ。昔はその相手がリンダでなく私だったのに…」
…はあ。そうなんですか。
つまりはカヤ→イワン→リンダ→ペペ、というまさに横恋慕の数珠繋がりって訳なんですか。ペペがどう思ってるのかはまだ分からないからいいとして。それがもうじき、イワンとリンダの結婚って形で無理矢理収まろうとしてるってのね。ああ、そういう状態だったのか。複雑だ。面倒だ。って俺が面倒がる必要ないんだけど。ひょっとしたらこいつら、永遠に石になってたほうが良かったんじゃねえのか。などと縁起でも無い事を考えてしまった。
そしてキーファ達はまだ盛り上がっている。
「イワンとあのメイドは、人には言えない怪しい関係をもっていそうだなあ」
いまさらしみじみ言うなよ。ていうか今時言わねーよ「怪しい関係」。
「メイドとイワンのことか?わりいな。男と女のことはオイラにゃよくわかんねえよ」
ガボのくせに遠い目をするな。
「不潔よ不潔!イワンにリンダを愛する資格はまったく無いわ!」
お前はまだ言ってんのかマリベル!分かったからほら、そろそろ行くぞ!
その場を後にする俺達。その後ろから、溜め息混じりのカヤの独り言が聞こえてきた。
「いいかげんにもうそろそろイワン様も、ご自分の気持ちに気付いてくれないかしらね。イワン様が愛しているのはリンダでなく、リンダの不幸な身の上だという事に…」



やれやれ、とんだ場面に居合わせちまったな。
気を取り直して今度こそリンダの家に行く。道具屋の店先では、先ほど部屋を飛び出したイワンがリンダに閉め出しをくらって立っていた。
「うう、畜生。話す間もなくリンダに追い出されてしまった…。今のオレに出来るのは、リンダの機嫌が治るのを待つ事くらいだな」
ああもう、何度も言うけどマジでなさけねーな。しかも絶対愛されてねーしこいつ。
「あはは、いい気味ぃー」
マリベルが遠慮なしにイワンを笑い飛ばす。もっと言ったれ。
2階に上がってリンダの部屋に行くと、そこには先客がいた。見た所、旅の商人のようだが。
その商人は、懐から小袋を出してリンダに渡しがら言った。
「……リンダちゃん。コレ、少ないんだけど借金の足しにしてよ」
「よしてください。お金なんてもらえません」
「キミのお父さんには若い頃とても世話になったんだ。だから受け取ってよ。亡くなったご両親の借金だってまだかなり残っているんだろ」
「それなら心配ないです。私、イワンと結婚するんです」
あや。言い切った。
「ええ!?ボルックさんの息子とかい?そうか!そいつはおめでとう!じゃあこれは御祝儀だ。少ないけど、とっといておくれ。それじゃ元気でな、リンダちゃん」
金袋をリンダに押し付け、商人は去って言った。
「借金かあ…。生まれてこのかた金に不自由した事がないから、オレには馴染みがないなあ」
「かわいそうだな。リンダには父ちゃんも母ちゃんもいないのか」
キーファとガボは、リンダの境遇と自分とを重ね合わせている。なんだかなあ。リンダがイワンを好いているとは到底思えない俺には、リンダは借金のために無理矢理嫁に行こうとしているようにしか見えないんだよな。それでも本人が結婚するって言ってるんだからいいのかもしれないけどさ。
リンダは袋を握りしめたまま、暗い表情でつぶやいた。
「つらい時に人から優しくされるのって、とてもありがたい事だけど…。今は誰に何をされても心が痛むだけなのよ。相手の優しさに応えられるだけの余裕がないから」
んー、そう言われちゃな。こりゃリンダの方はそっとしておくのが今は一番いいみたいだな。やっぱり俺達はペペの方を何とかする方法を見つけよう。
そう思って店から出た。するとリンダが駆け出してきて、俺達を追い抜かしそのままボルックの屋敷のほうへ一直線に走っていったじゃないか。何かあったのか?


リンダは屋敷ではなく、離れの小屋の方に来ていた。横たわるペペの側で、ペペの父親と話をしている。
「お前さんが悪く思う事など少しもありゃせんわい。あのバカが自分で勝手にやった事なんじゃから、もう気にするでない。」
「でもずっとペペがこのままだと思うと、私……」
たぶん、リンダはいてもたっても居られなくなってここに来たんだろうな。俺達も何とかしたい所だけど……。
と、次にペペ父が言った言葉に俺は飛び上がった。
「大丈夫じゃ。世の中には秘薬という、どんな病をも治してしまう凄い薬があるそうじゃ。それを手に入れる事が出来れば、ひょっとしたらペペを救えるかもしれん。」
……やいジジイ。そーいう薬があるってんなら先に言えコラーー!!
俺達すっげえ無駄な時間過ごしちゃったじゃんか!
「秘薬か…。だけどそんなもんどうやって探せっていうんだよ」
「アナゴンの事だからさ、秘薬をもって来てあげようとかいらん事考えてんでしょ。あ〜しんどい。お人好しと冒険してるとホント苦労させられるわ」
うるせえよ黙ってろお前ら。
「どんな病をも治す秘薬の産地は、東のけわしい山を越えた先にあるそうじゃよ。」
しかも場所までバッチリ知ってんじゃねえかペペ父よー!ナメてんのか。
「そこで旅のお方よ。東へ旅立つ用事があるのなら、秘薬を買ってきてはくれまいか。老いたわしより先に息子が寝たきりになるなど、見るに忍びないんじゃ」
よし来たーー!畜生覚えてろよ!!ぱっと行ってぱっと取ってきてやらあ!!
なかばヤケ気味に引き受ける俺。いくら物事には順序があるっつっても、こりゃ回りくどすぎんだろが!ったくよ!!
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