ドラクエ7冒険記 <さくさくDQ劇場

FILE:57「馬鹿言ってんじゃないよ」
「アナゴンさん、その話は本当なのですか。町のすべての人間が石になっていただなんて、わしには信じられん」
本当だって言ってんだろーがジジイ!!
まるで身体がパントマイムでもしているかのように固くなっているペペを、屋敷の離れの小屋に運んだ俺達。この小屋には、年老いたペペの父親と弟のポルタがいた。どうやらペペの3人と住み込みで、屋敷の庭師として働いているらしかった。
ペペをベッドに寝かせると、俺は皆にさっきまで起こっていた事を話して聞かせた。当然、呪われていた町を俺達が救ってやった事もだ。するとまあボルックからは予想通りのリアクションがかえって来たわけだが。「そうでしょーね無理もありません」なんて大人な対応をする気にはなれなかった。
「ウソじゃないよ。オレ達がここに来た時は、みーんな石になってたぜ。どれくらいの間石像のまんまでいたかってのはオレには分かんないけどね」
「いやいや、申し訳ない。もう疑ったりしません」
キーファの言葉にやっと納得するボルック。もっと謝れ。
「しかし、何ということだ…。以前、町を訪れた子連れの老人が語った通り、人間が石になってしまうとはな、。一つ納得出来んのは、わしらはこうして助かったのに何故ペペだけが…」
なんと、あの時ダイアラックを発ったクレマンとヨゼフがこの町に立ち寄ったのか。別れ際に言ってた通り、灰色の雨の事を世の中に広めてたって訳だな。しかし灰色の雨に関する知識を授かっても、防ぐ術はないようだ。雨が降ればたとえ屋内にいる人間であっても問答無用で石になっちまうからな。今回だって事前に灰色の雨の事を皆知っていたにもかかわらず、あの有り様だったもんな。
そうなるとクレマン達の決心や努力は完全に無駄だという事になるんだが……。何とかならないもんかな。やっぱり俺達が一刻も早く、全ての元凶ってヤツをどうしかしなきゃいけないのか。
そして、このペペも何とかしてやらないと。こいつの呪いを完全にとかなければ、俺達のここでの役目は終わった事にはならない。
ペペに救われたリンダは目を伏せ、申し訳なさそうに言う。
「みんな私が悪いの。私を庇ったせいでペペは灰色の雨を直接浴びてしまった…。
 どうしてよ、ペペ。いつもは私に冷たいくせに、なんであの時だけ……」

「おっと、忘れる所だった」
リンダのその言葉に、イワンが反応した。
「リンダ、オレは見たんだぞ。ハーブ園でペペと一体何をやっていた?説明してくれよ」
お前さー、今そんな事言ってる場合かよ。と呆れ顔になる俺達。
「べ、別に何も…」
あきらかに動揺して答えたリンダに、イワンはさらに責めよる。
「だったら聞かせてくれ。それとも婚約者のオレにも言えなような事なのかい?」
イワンのバカ!私は何もしてないわよ。もう、放っといて!」
イワンを怒鳴り付け、リンダは小屋を出ていってしまった。慌ててその後を追い掛けていくイワン。婚約者だか何だか知らないけど、あいつ絶対愛されてねーな。
「…イワンめ。客人の前だというのにはしたないマネをしおって。すまんがアナゴンさん。話の続きは屋敷でしましょう。後で是非いらしてください」
ボルックも去っていく。後には俺達とペペ、その家族が残った。
「兄さんはハーブ一筋で今まで生きてきた人なんです。いつか自分のハーブ園を持つっていうのが兄さんの子供の頃からの夢だったんだ。それが叶うまでは兄さんは、死んだりしねえ…。」
「……馬鹿な息子です。身を犠牲にしてリンダを庇ったとしても…。もう既にリンダには、イワンという許嫁がいるというのに」
ペペの弟も父親も沈痛な表情で、石のように固まっているペペを見つめている。なんだかいたたまれなくなって、俺達は小屋を出た。



さて、どうしたもんか。俺達はとりあえず、ボルックと話をする前に今度こそ町の様子を見て回る事にした。 町の呪いはすっかりとけていて、ペペ以外の人間に関してはもう心配は無さそうだ。俺達が見て来た石像は皆、元の人間に戻って普段通り活動している。
聞き込みも色々してみた。この町はハーブで有名な所で、遠くから買いに来る人間も多いらしい。そのハーブを栽培しているのがボルックのハーブ園で、ペペはそこの有能な庭師だという事だ。
ついでに、ペペとリンダ、イワンの事も(聞いてもいないのに)色々と教えてくれた。リンダとイワンは婚約者だけど、リンダは本当はペペに気があるらしいとか。リンダの死んだ両親が昔ボルックにした借金のせいで、リンダはイワンからの求婚を断れないんだとか。なんていうか、恰好の話題のネタにされちまってるなアイツら。まあ、色々複雑だという事は分かったが俺にとってはどーでもいい。マリベルは興味津々だったが。
リンダは、道具屋の2階に住んでいた。元々は両親の店だったが、亡くなった後は他人に店を任せているらしい。
俺達が訪ねると、彼女はぼんやりと窓の外を眺めていた。
「ああ、覚えているわ。ペペを運んでくれた旅人さんね。もしかして、あなた達も私とペペの事勘ぐってここまで来たっていうの?」
いや、そんな訳じゃ。
マリベルが何か言おうとしたんで慌てて口を押さえる。
「なら、いいわ。私とペペは何でもないのよ。ホントに、何でもないの……」
そう言って再び窓の外に目をやるリンダ。どうやらペペに気があるってのは本当っぽいが。だったら、今回の事も相当ショックだろうな。
ふと俺は、この部屋にあった日記の内容を思い出した。最初にこの町に来た時、色々調べていて見つけたものだ。
”夢を追うあの人の瞳に 私は映らない。
目をそらす事であの人は 私を避けようとする。
私をじゅうぶん意識しながら…”

その文章に何かひっかかるものを感じつつ、リンダの部屋を後にした。



ひととおり町を見回った後、ボルックの屋敷に戻る。あのジジイと何か話した所でペペがどーにかなる訳でもなさそうだけどな。
屋敷の食卓では、ボルックと息子のイワンが話をしていた。イワンの情けない声が聞こえてくる。
「ペペが寝たきりになったせいで、リンダの奴元気がなくってさ…。オレの前じゃ強がってみせてたけど、ありゃ相当落ち込んでるよ絶対。どうしよう…このままじゃリンダとの結婚の話をこれ以上進める事が出来やしないよ」
うわーほんといいトコねーなこいつ。口を開けばリンダリンダってさ。大体そーいうのは親に相談する事じゃねーだろ!結婚なんか考えた事のない俺にだって分かるぞそんなの。お前の許嫁だろ。お前が何とかしてみせろよ。と心の中でめちゃめちゃ突っ込みまくってやる。
当たり前だが、そんな不甲斐無い息子にボルックから叱りの言葉が飛んだ。
「ええい、泣き言など言わず黙ってリンダの不安を取り除く事を考えんか!困った事だがイワンよ。ペペはリンダの幼馴染みだし、ショックが大きいのも当然だ。やはりリンダのためにもペペには何としても目覚めてもらわねばならんぞ」
「そうだね。オレもペペを目覚めさせる方法を一人で考えてみるよ」
やっと少し安心したような顔をして、イワンのバカは上の階へと去っていった。ひょっとしてこいつ、父親がいないと何も出来ないのか?!こりゃー育て方間違ったな、ボルックさんよ。
「イワンの取り柄って、親がお金持ちだっていう事だけのようね」
とマリベルも手厳しい意見を述べる。
「同じお金持ちでも、全てにおいて欠点のないあたしとは大違いね」
……いや、それはどうかな。

「おお、アナゴンさん。約束通りわしの屋敷に来て下さいましたか」
やっとボルックとの話が始まった。
「まったくこんな事になってしまうとは…。リンダが心配です。それとなく彼女を気づかってやってくださらんか。旅のあなた方にこんな事まで頼んでまことに心苦しいのですが。それにしてもこんな時に、わしの息子イワンは一体何をしているんだ…」
ってちょっと待て。何で俺達がそんな事。
俺としてはペペの方をさっさとどーにかしたいんだけどな。なんかどっかにないのか?そのへんのダンジョンとか塔とかに隠されてる、万病に効くそーいうのが。などと都合のいい期待をする俺。しかし今までそんな話は一度も出て来ていなかった。こうなったら、打開策が見つかるまでは仕方ないか。またリンダの所に言ってみよう。
別れ際にボルックはこんな事を言った。
「リンダには気持ちよく息子に嫁いでほしいのです。息子とリンダの結婚が決まればわしも、したくもない借金の取りたてをしないで済む。金を用立てたわしの立場で借金を帳消しにしてやるには、嫁に来てもらう他ないのです」
ふーん。こいつはこいつでちゃんと考えてんだな。
でもペペが無事目覚めたとしても、果たしてリンダは幸せになれるんだろうか。なんて事をふと思ってしまう俺だった。
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