ドラクエ7冒険記 <さくさくDQ劇場

FILE:56「男の怒りか 男の怒りか」
そのまま屋敷の1階へ降りていった。その場にあった石像達の呪いは無事にとけていて、皆普段通りの生活に戻っていた。
「あら、見かけない顔ね。あなた達もここで雨宿り?」
俺達に気付いて声をかけてきたのは、廊下を掃除していた若いメイドだった。このままじゃ俺達は立派な不法侵入者(いつもの事かもしれないが)なので、彼女の問いには適当に頷いておく。
「フフ、そんな所でしょうね。それより私、カヤっていうの。お屋敷の事なら何でも聞いてちょうだいね」
台所にいた農夫の話によると、灰色の雨が降ったせいで町の人間はほとんど家に駆け込んだんだそうだ。どうりでそういう恰好の石像が大抵の家屋にあると思ったが。まあつまり、俺達も同じだと思われたんだな。

「おや、ボルックさん。いつの間にか晴れ間がのぞいていますよ」
ふと、台所の隣から話し声が聞こえて来た。この屋敷の主人と、客人らしき武闘家風の男が、食卓で会話をしている。
「おお、そうか!何事もなく灰色の雨がやんでくれて良かったわい」
「まったくですなあ。しかし、雨にあたっただけで人間が石になっちまうなんてホントですかねえ?」
呑気な奴らめ。さっきまでカチンカチンだったくせに。
「疑っとるのか。お前だって見ただろう。あの無気味な紫色の雨雲を!」
「とにかく無事で何よりです。オレはちょいと外の様子でも見てきますよ。
 でも…、おかしいなあ。さっきから妙に身体がギクシャクするんだよなあ」

だから石になってたからだって。この事って教えてやるべきなのかなあ。やっぱ。
「なあ、今の聞いたか?みんな石になっていた事を覚えていないようだぞ」
「おめでたいわね。みんな雨宿りをした事しか記憶にないなんてさ。ちょっとアナゴン、大声で叫びなさいよ。呪いで石になっていたみんなを救ったのはマリベルとその仲間達ですって!」
断固断る。
ひとまず俺は、この屋敷の主人のボルックという男に話を聞いてみる事にした。町の人間に、灰色の雨に関しての知識があるってのもなんだか気になるしな。
なんて事を考えながら話しかけてみたら、ボルックの口からはこんな言葉が。
「勝手に屋敷で雨宿りした事なんかで、わしは怒ったりせんよ」
………お前絶対怒ってるだろその口調は。思わず黙り込んでしまう俺だった。
「そんな事よりも大事なわしのハーブ園は大丈夫だろうか。灰色の雨のせいでハーブが枯れていなければいいが……」
そして独り言で終わる。なんか俺達眼中に入ってない?畜生、せっかく遠いとこからやってきて呪いといてやったってのに。頭にきたんで「呪いで石になっていたみんなを救ったのはアナゴンと奇妙な仲間達です!!」と叫んでみたが誰も聞いてくれなかった。そしてマリベルに殴られた。


さて、気を取り直して今度は外の様子でも見てみるかな…と屋敷を出ると、
「誰か来てくれ!大変だ!逃げ遅れたヤツがハーブ園で石になっちまってるぞ!」
という声が、近くから聞こえてきた。何?!
「そんな馬鹿な!助からなかった奴がいるってのかよ」
そりゃイカンと駆け出す俺達。屋敷の庭だと思っていた場所はハーブ園だったらしい。さっきは気がつかなかったけど、言われてみればハーブの香りがするな。たしかあそこには2体の石像があった筈だが……。
そのハーブ園の入り口は人だかりが出来ていて、俺達が入り込む事は出来なかった。仕方なく裏口まで回る。
すると今度は裏口のドアの前に人が立っていた。そいつは、さっき屋敷の2階で見た独り言ターバン男だった。おーい邪魔だぞ!
「ペペが力づくで女をねじ伏せるなんて思いもしなかった。うちの庭師の分際でオレの可愛い許嫁にちょっかい出しやがって!」
なにやらそんな事をまた一人で呟くと、そいつはドアを開けハーブ園の中に入っていった。
「何なのよあの男!せっかく人が話しかけてんのに無視する事ないでしょうが」
気持ちは分かるが今はそんな事言ってる場合じゃない!俺達も急いで奴の後に続く。

ハーブ園の噴水の前では、さっきまで石になっていた女が蒼白になって立ち尽くしている。そして、その上に覆いかぶさっていた男が地面に倒れていた。どうやら女のほうは無事に石化はとけているようだが…。
「目を覚ましてよ、ペペ。こんな時に冗談なんかやめてよね。ねえ、お願いだから返事をしてよ!」
女が男に必死に呼び掛けている。倒れている男…ペペは一見ちゃんと人間に戻っているが、まるで人形のようにピクリとも動かない。どうなってんだこりゃ…。
さっきのターバン男が女に話しかけた。
「落ち着けよリンダ!何があったのか分かるように説明してくれ」
「ペペが…ペペが…。灰色の雨から私をかばってこんな事に…」
リンダと呼ばれたその女は、涙で顔を濡らしながら答えた。灰色の雨ってのは、長く浴びすぎると天使の涙も完全に効かくなるものなのか?だったらどうすりゃいいんだこれ。
と、そこに。
「良かった良かった。ハーブ園に被害はないようだな。…おや、イワンか」
さっきのボルックが呑気な事を言いながらやってきた。
「どうしたんだイワン。こんなとこで何をやってる」
「聞いてよ父さん!ペペが灰色の雨をあびたんだ。石にはならなかったけど、意識を失って全然目を覚まさないんだよ」
ターバン男の名前はイワンで、このボルックの息子のようだった。
イワンの言葉を聞いたボルックは驚く。固まって倒れているペペの存在にここでやっと気がつくのも凄い。
「な、何だと!それならそうと、ボサっとしとらんでとっととペペを家に運んでやれ!」
「でもペペの身体は石みたいに固くて一人じゃ運べないよ」
「ええい、情けない男だ」
まったくだ。このイワンって奴はなんて頼りがいのないボンなんだろう。しかもリンダを庇っていたペペを「襲っていた」とかいって早とちるカンチガイ野郎だ。いいとこねーな。
するとボルックはよりにもよって、俺達の方を見ると
「すまんが旅のお方、ペペを家まで運ぶのにちと手を貸してくださらんか」
などとのたまった。テメエは運ばんのかい!!
俺が露骨に嫌そうな顔をすると、奴はさらにこう言いやがった。
「灰色の雨がやんだ後、あなた方がわしの屋敷から出ていくのを見ましたぞ。うちで雨宿りをした恩返しだと思って、どうか手を貸してくださらんか?」
そーーーーきたかっ!!ていうかやっぱお前怒ってたんじゃねえか!
この息子にしてこの親ありか(いや、逆か?) 畜生。本来なら、恩返しとして礼を受け取るのは俺達の筈なのに。こうなったら何があったか一部始終話してやろうじゃねえか!覚悟しろよジジイめ。耳の穴かっぽじって、命の恩人の話をとくと聞くがいいわ!!!
もどる

HOMEホーム