ドラクエ7冒険記 <さくさくDQ劇場

FILE:53「走る走る俺達」
今この兵士、確かに「からくり兵」って言ったよな。
そいつの言葉に、フォロッド7世は目の色を変えて玉座から身を乗り出した。
「なんと!それはまことか!?」
「はっ、間違いございませぬ。西のはずれに!」
「ほほう!やはり禁断の地というのはそのような意味をもっていたのだな。これは面白くなって来た!よし!兵を表に揃えよ。ただちに出発いたすぞ。私をその場所へと案内いたせ!」
「はっ!」
えーと、あのー。
急に周囲が動き出してどーしていいのか解らない俺達に、王様は興奮気味に言い、
「すまないな旅の者。大事な用件で出発せねばならぬ。まあ我が国でゆっくりしていくがよい。ではまたな!」
ビシっと手を挙げて、そして慌ただしく去っていってしまった。
…つまり、兵士がゼボットの研究所に入り込んでからくり兵を見つけ出したんで、今から王様がそれを見に行くってんだな?ゼボットの所にいるからくり兵っていったら……。どうするよお前ら!
「ちょっと見たアナゴン!若くてかっこいい王様!どっかの国の王子とはえらい違いだったわよね!」
「いやあ、ずいぶんと若い王様だったなあ」
そこかよ。ていうか違うだろ!今まで何聞いてたんだお前等ー!
「おいアナゴン、王様行っちまったぞ。オラたちも追いかけようぜ!」
ガボの方がマトモじゃねーか!よし、よく言った!!


慌てて俺達は階段を降りる。玄関先では、王様と兵士数名がこれから出発する所だった。
「ついに我らが待ち望んでいたからくり兵を見つける事が出来た。皆の者、これより直ちに禁断の地へと出発だ!」
感慨深かげに宣言する王様。とそこに、一人のじーさんが乱入してきた。なんだこのハゲは?
「お待ち下さい!はあはあ…。国王様、なりませぬ!禁断の地に入ってはなりませぬぞ!」
どうやらこのじーさんと王様は知り合いのようで、王様は普通に受け答える。
「アルマンよ、ついに見つかったのだ。いにしえのからくり兵がな!とうとう私の夢が叶う時が来たのだ。そなたも喜んでくれよう!」
「私に免じて何も聞かずにおやめくだされ!」
「はっはっは!何を言うのかアルマンよ。土産を楽しみにしているがよい!」
何故か出発を止めたがるじーさんの言葉も空しく、王様は高笑いしながら兵士達と共に城を出ていってしまった。
しかしこのアルマンとかいうじーさん、何か知ってるのか?ていうかゼボットの研究所が禁断の地になった事に関係あるんだろうか。
そういえば思い出した。このアルマン、フォーリッシュで見たぞ。確か国王の剣の師匠だったってヤツだ。道理でいきなり現れて口出ししても王様は何も言わなかったわけね。
などと様子を伺っていたら、俺達の姿を見たアルマンが必死の表情でこう言ってきた。
「すまぬが旅のお方、私の話を聞いてくだされ!西のはずれの岬のあたりは、はるかいにしえより禁断の地とされています。誰も行ってはならん、誰も邪魔してはならんのです。たとえどんな理由があろうとも!お願いですじゃ旅のお方。わしの足では国王に追いつけん。なんとか国王を止めて下され。この生い先短い年寄りの願いを聞いてくだされ!」
相当の訳アリだなじーさん。何でそんなにあの場所にこだわるのかはしらねえけど、俺達も今からそこ行く所だったんだよ。
「アナゴン、行こう!禁断の地とやらへ行けば、消された過去の謎が少しは解けるかもしれないぜ!」
「オラたちの足ならぜったい王様に追いつくぞ!じいちゃんの願いだアナゴン、行こうぜ!」
そーゆーことでバッチリ任せな!行くぜ、禁断の地っていうかゼボットの研究所に向かってバクシーン!
何故かノリノリの俺だった。



で、バクシンしてやってきたぜ研究所。急ぎ過ぎたのか、王様が到着するより先に到着したようだ。さて、一体どうなってるんだかなここは…。
様子はあの頃とほとんど変わってはいない。そっと中に入ってみると、さびついてボロボロになったからくりの残骸が目についた。前見た時はまだ新しかったのにな。時の流れを感じるぜ。
研究室には特に何もない。俺達は寝室へと足を踏み入れた。そこには…
「ぜぼっと キョウモウゴカナイ…。ナニモシャベラナイ。
 すーぷ サメタ。ツクリナオシ…。」

ベッドには白骨が横たわっている。そしてからくり調理機の前に立つのは…エリーだ!
「コノすーぷノメバ ぜぼっとゲンキニナル…」
…なんてこった。俺は言葉が出なかった。皆も呆然としている。
「信じられない…。あれからどれだけの時間が経ったと思うの?今でもエリーはゼボットさんの世話を…」
「エリーは歳とらないのか?これからもずっとああして動いていられるのか」
これからも、ずっと。ああして。
永遠に動く事も喋る事もないゼボットを、いつかは元気になると信じて、エリーは奴のためにスープを作り続けるのか?
俺は憤った。ゼボットよ、お前が望んだ生き方ってこれか?自分が死んでも、エリーには動力が残っている限り自分に尽くさせる気だったのか?
…いや、そんな気はなかったよな。エリーと一緒にいたお前を思い出すかぎり、少なくともそう思うような奴じゃなかった。でもこの現実は何だよ!エリーはからくりとはいえ、こりゃちょっと残酷じゃねえのか?!お前が望んだ永遠の命って、こんな結果を生み出すためのものだったのかよ!
俺の目には、スープを作るエリーの姿はとても哀しく映った。きっと他の皆も同様だろう。人間はいつか死ぬ。いつ死んでも今死んでも同じ。死んだらそれで終わり。死んだらそれっきり…。大事な人を失った悲しみに耐える事が出来なかったゼボットの言葉が、頭の中で何度もこだました。

「ややっ、そなた達は!一体どうしてここにいるのだ!?ここは禁断の地であるぞ!」
突如、部屋の中によく通る声が響き渡った。研究所に到着した王様達部屋に入ってきたのだ。
思い掛けない先客の姿に、少々機嫌の悪そうな表情で王様は言った。
「いや、ここで旅の者に禁断の地を説いても仕方あるまい。おそらくアルマンに何か吹き込まれて来たのであろうが。まあ、それはそれでよい。理由はどうあれ私の邪魔だてはしないでくれよ。もし邪魔をしたなら、私はアルマンを捕らえねばならなくなる。解るな?さ、それではそこを通してもらおうか」
ちっ、そう来やがったか!これじゃ手出し出来ないじゃねーか。こんな事なら研究所の周りにバリケードでも作っとくんだったぜ。
王様は何も出来ない俺達の横をすりぬけ、ベッドの脇でゼボットの亡骸にスープを飲ませようとしているエリーに近付いた。
「おおっこれか!これがいにしえのからくり兵か!信じられぬ。今だしっかりと動いているではないか!素晴らしい!これで我が国の研究は一気に進展するはず!よし!さっそくこのからくり兵を城に持ち帰るぞ!」
兵士達が現れ、エリーを取り囲んだ。
「大事に扱ってくれよ。こいつは国の宝なのだからな!」
「はっ!」
国の宝だあ?そいつがどういう経緯でここに居るかなんて、知りもしないくせに。
「エリーに触るな」という、ゼボットの声が聞こえてくるようだった。
「ようし、いい子だ。頼むから暴れないでくれよ。いい所へ連れていってやるからな」
「ぜぼっと ウゴカナイ…。アタタカイ すーぷ ノマス。ぜぼっと ゲンキニナル…」
「そうかそうか。スープなら城に帰ってたっぷり作らせてやるぞ。さあ、ついて来い!」
「すーぷ サメル。スープ ツクル…」
エリーは、兵士達に連れられて研究所から出て行ってしまった。
王様は、ベッドに横たわるゼボットの遺骸を見て言った。
「これが…。いや、きっとそなたがからくりを作り出した者なのであろう。偉大なる発明家よ、既に者言わぬそなただが、その優れた知恵、借り受けるぞ!」
そして残された俺達に向き直る。
「これで空白になった数百年の時が一気に埋め尽くされるのだ。そなた達、実は大変な歴史的瞬間に立ち会ったのかもしれんな。さあ、これから時代が動き出すぞ!はっはっは!人の世の明るい未来が見えるようだな!」
そう言い残し、王様も去っていった。


畜生、結局何も出来なかったぜ。まんまとエリーを連れてかれちまったじゃねえか。
「やっべー!ひょっとしたらエリー、ぶっこわされちまうのか!?そんなのだめだだめだ!早く助けに行こうぜ!」
「大変!これじゃアルマンさんの頼みを聞くどころじゃないわ!アナゴン、急いで!フォロッド王の後を追うのよ!」
「まずいぞアナゴン!このままじゃエリーは何をされるか分からないぞ!オレ達も急いで城に戻ろう!」
皆が口々に叫ぶ。過去の出来事を知る俺達にとって、これは放っておける事態じゃないよな。
俺達は今度は城に向かって、一直線に駆け出した。
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