現代に戻った俺達。フィッシュベルの実家で一泊した後さっそく、復活したフォロッドへと向かう。フォロッドの大陸はせきららゴーゴー(注:移民の街)のすぐ近くにあった。
さて、まずはフォーリッシュの街から見ていくとするか。
「気のせいか…街の雰囲気が明るくなっているようだな」
「くんくん…。おおっ!油くさくねえぞ!いやなニオイがきえてらあ」
あれから何百年と経ってるけど、あの戦いの傷をひきずっている様子はさすがに見られなかった。最初に訪れた時のものものしさが嘘のようだ。
ただ、砦にぐるりと囲まれている街の造りはそのままだったが。
適当な家屋に入ってみると、からくり掃除機がウィンウィンと床を這い回っているのがみられる。このへんも昔と変わらないんだなあ。若干デザインが違っているようにも見えるけど。
そこにいた街の女に話し掛けてみると、そいつの説明をしてくれた。
「数年前、フォロッド城の地下室から古いガラクタの下に隠れていたからくり掃除機が見つかったの。誰がいつの時代に造ったのか分からないんですって。なんだか不思議よねえ」
え、数年前?
「でも、それをもとに研究して今の新しいからくり掃除機が出来たってわけ。大昔の人達の知恵に感謝しなくちゃね!」
なんと、このからくり掃除機がこうやって使われるようになったのは最近の事なんだと。しかも…
「誰が造ったか分からないって…。この人達はゼボットさんの事も知らないわけ?」
ゼボットの事だけじゃない。街中で聞き込みしてみた結果、どうやらからくり兵との戦いがあった事も知らない…というか、その事件自体がどうやら歴史から抹消されてしまっているようなんだ。どういうこった?
「昔の記憶が何も残っていないって?そいつはおかしい…。忌わしい過去だったから、ひょっとしたら誰かが意図的に消したんじゃないのか?」
「み〜んな忘れちまったのか!?あんなおっきなできごとを?あったまわりいなあ」
ガボに言われたらもうおしまいだな。俺なら自殺するね。
そして聞き込みをしていて気になったのが、城のほうだ。今この国を治めているフォロッド7世は、国中の学者を集めて新しいからくり製作の研究に没頭しているんだそうだ。なんでも、人型のからくりを造り出す事に挑戦しているらしい。
人型か。何となく嫌な予感がするような。
とにかく、今度は城のほうに行ってみよう。
というわけで、フォロッド城にやってきた。俺達はここで戦争という国を守る戦いの厳しさと、傭兵という雇われの身の哀しさを思い知ったんだよな。いやあ、あの慌ただしい日々がまるで昨日の事のようだ。昨日の事だけど 。
城のほうもすっかり落ち着いていて、以前のようなピリピリした空気は微塵も感じられない。要塞のような造りは相変わらずだったが、今は敵らしい敵もいないようで平和的なムードが漂っていた。
ただ、ガボいわく油のにおいはするらしい。からくりの研究をしてるっていう話だから、おそらくそのせいだろう。
始めに、兵士の宿舎のほうを訪ねてみた。…ら、そこはもう宿舎ではなくなっていた。学者らしき人間が何人もいて、机に向かって調べものをしていたり、造りかけのからくりを調整したりしている。
つまり研究室になったんだなここは。過去に城がからくり兵に襲われた時、ゼボットのせいで宿舎から追い出された事をなんとなく思い出して嫌な気分になった。
「よし、今じゃ。スイッチを入れるのじゃ」
「はっ」
学者達の中で一番偉そうな、年老いた男が助手らしき男に指事を出す。助手は調整していた人型からくり(なんかマッチョなデザインだ)を起動させる。
…と、そのからくりは2歩ほど歩いた所でケムリを吹き出し、ブッ倒れた。
「い…いかん!スイッチを切るんじゃ!」
「はっ、はい!」
「くそっ、解らん!一体何が悪いというのか!何故歩いてくれんのじゃ!」
どうやら失敗だったらしい。老いた学者は悔しそうに呻いている。
その様子を遠巻きに眺めながら、俺達はこそこそと話をかわす。
「ちょっとこの連中ったら、本当にからくり人間なんて作れると思ってるのかしら」
「驚いたな。ここでは本気でからくり人間の研究をしているらしいぞ!」
しかもまだ歩くレベルにも達してないみたいだぞ。こんなガラクタ囲んでいい大人があーでもないこーでもないと頭をひねっている姿は、なかなか情けないものがある。
「また失敗でした。やはりからくり人間など夢なのでしょうか…」
「確かにからくり掃除機を造る事は出来たんだが、それはお手本があったからさ。からくり人間ともなればまったく別の話だ。掃除機の中身と同じでは、うまく行くはずがないよな」
あったりめーだッッ!!と、学者達の言葉に思いっきり突っ込んでやった。しかしそれをモノともせず、他の学者が真顔でぬかす。
「我々が2本足で歩ける以上、からくり人間も歩けるはずなんだが、思うようにいかない!ふーむ、我々人間は一体どうやって2本の足で歩いているというのだろうか」
…バカだこいつら。このぶんだとからくり人間を造るなんて夢のまた夢だろうな。
ていうか、こいつら雇ってる金って税金だよな?俺が国民だったら間違い無く暴動起こすぞ。
今度は詰め所に来てみた。作戦会議ばっかりやってたあの場所だ。
そこは昔と変わっておらず、中央に据えられたテーブルの周りに城の兵士が待機している。
兵士長らしき男に声をかけてみる事にした。こいつの顔はどこか、あのトラッド兵士長に似ている気がする。兵士長っていうのはみんなこーゆー顔してるもんなんだろうか。どうでもいいけど。
「そなた達は旅の者だな。ならば聞くがよい。この大陸の西の外れは、昔より定められた禁断の地。いかなる者も立ち入る事は許されておらぬ。無論お前達も同じ事だ。行くなと言われれば行きたくなるのが心情だが、決して行ってはならぬ。よいな!」
兵士長の言葉に耳を疑う。何?西の外れっていったら…、ゼボットの研究室があった所じゃないか。それが禁断の地だって?
「ふむ…。何らかの理由で、この世界ではゼボットさんの所を立ち入り禁止にしたようだな」
気になるな。俺達が去った後、ここでは一体何があったんだろう。
正門から城の中へと入り込み、王の間に出た。玉座には若き国王フォロッド7世が座っていて、傍らに大臣。王の向かいには3人の学者達がいる。そのうちの一人は先程の老学者だった。丁度話をしている所らしい。俺達は後ろの方で彼らの会話を聞いてみる事にする。
「ぬぬぬ…。まだ出来ぬと申すか!この上一体何人の知恵を寄せれば良いというのか!ええいっ不甲斐無い!国王様に顔むけが出来ぬわ!」
大臣が、3人の学者達に向かって怒鳴りつける。どうやらからくり人間製作には、けっこうな時間と人数が使われてるようだな。全然実にはなってないけど。
「はっはっは!そんなに大声を出すと血圧が上がるぞ大臣。この私が急かせすぎたのかもしれん」
フォロッド7世が笑いながら大臣をなだめる。おおらかな性格みたいだ。
しかし大臣はおさまらない。
「何をおっしゃいますか国王陛下!とんでもございませぬ!全てはこの者達の力不足でございまする!」
だったらテメーでやってみろや!という学者達の声が聞こえてくるようだ。やっぱり雇われの身は辛いよなあ。
「いにしえのからくりより新たなからくりが生まれたゆえ、期待しすぎたのかもしれん」
大臣の激昂とは裏腹に、王様は学者達に非難の声を浴びせはしなかった。学者達には有り難い事だろう。
このフォロッド7世は広い心で物事を見て、上から押し付けるような事はしない、いい感じの王様だなと思った。きっと皆から慕われてるんだろうな。
会話が終わったようなので、俺達は王様に挨拶をする事にした。旅人の礼儀だ。
「旅の者か。我がフォロッド城へよくぞ来た!今我が国は他のいかなる国にも先駆け、未来を見つめた研究をしておる。そなた達が国に帰ったなら伝えるがよい。わが国を見習い、同じ道を共に歩むなら明るい未来は約束されるとな!」
挨拶をすると、燃えるような瞳で営業されてしまった。ず…ずいぶんと熱血してんなこの王様は。自分の方針によっぽどの自信がおありのようだ。
「おおっ、そうであった。そなた達ももう下がってよいぞ。部屋に戻り研究を続けるがよい」
王様がそう言うと、まだそこにいた3人の学者達は一礼して去っていく。
…そこに、入れ違いに兵士が一人駆け込んできて王様の前にひざまづいた。なんだかとても急いでいるようで、息が切れまくりだ。
「は…はあはあ……。お…王様に申し上げます!」
「これこれ、そんなに焦らずともよい。息を整えてから話すがよい」
「はっ!あ…有り難きお言葉。しかしまずはご報告を!ついに見つけましてございます。いにしえのからくり兵を!」
…あ?からくり兵!?
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