ドラクエ7冒険記 <さくさくDQ劇場

FILE:51「こんな生き方は許せませんか」
フォロッド城も、あの重苦しい雰囲気が嘘だったかのような勝利の喜びに満ちあふれていた。どれだけからくり兵によって苦しめられていたか、こういう光景からもまた解るもんだな。
「あやつる者のいなくなったからくり兵などもはやデク人形でしかない。今だ外をうろつくからくり兵も、もはや我々の敵ではなかろう。おぬし達も本当によく頑張ってくれた。これで傭兵の任は解かれる。王に事の次第の報告を済ませたらここへ戻ってきてくれ」
詰め所のヘインズにそう言われ、俺達は王の間へと向かった。

王の間には王様、姫に大臣。そしてトラッド兵士長とゼボット、エリーが揃っていた。
「おお、アナゴンよ!やっと戻って来たか。待っておったぞ」
王様も笑顔だった。そりゃそうだろう。絶体絶命の危機から無事脱出できたんだからな。俺達のおかげで。
「たった今トラッド兵士長より事の次第の報告を得た!そなた達の活躍もな。オホン!
 アナゴンとその仲間キーファ、マリベル、ガボ。そして我がフォロッド王国兵団兵士長トラッドならびにその弟ゼボットよ。今回の戦いでそなた達の活躍、実に見事であった!この国の王として民を代表して礼を言わせてもらうぞ。まことに御苦労であった!」

イエー!誉められたぜ!
「ハッ!我が使命をまっとう出来、嬉しく思っております」
「フン…」
ゼボットだけはやはりすさんでいた。あんな事があった後だし無理もねえか。なくても変わらない気もするが。
「ところで、そなた達には何か褒美をとらせたく思う。何がよいかな?」
王様のその言葉に「来た!」と心の中で拳を握る俺。
「私は使命を果たしただけであります。褒美など受け取れません。その分このゼボットと傭兵の者達に与えて頂きたく思います」
とトラッド。謙虚だ。しかしゼボットはクルリと後ろを向く。
「褒美など必要ない。面倒だから僕は帰らせてもらう」
ゼボットはエリーと一緒にそのまま王の間を出ていってしまった。無礼な奴だ。
「ゼボット様…」
その後を、何故か姫が追い掛けていった。なんだなんだ。
そういえばあのお姫様はずいぶんとゼボットの事を気にかけてたっけなあ。何かあるのかな。
「あーゴホン。では傭兵アナゴンよ。そなた達にはこれを送ろう」
仕切り直す王様。ていうか既に用意してたんじゃねーかよ。なら要望なんか聞くなよ。
「わが王家に伝わる毒蛾のナイフじゃ。これで斬り付けると敵がマヒする優れものじゃぞ!」
ぶーーっ!
それが褒美ですか王様よー!ちょっとってゆーかかなり期待外れなんですけど。傭兵なめんなよ。こいつひょっとしてハナから俺達用にコレ用意してて、トラッド達の要望だけ聞くつもりだったんじゃねーか?!
ま…まあ、色々あった後でこの国も大変だろーしな。気持ちとしてここは黙って受け取っておくか。相当ガッカリしながらも、俺はそのアイテムを素直に頂戴してやった。大人だぜ俺。
「かさねがさね言うがトラッド兵士長、ならびに傭兵アナゴン達、御苦労であった!」


王の間を後にして、なんとなくゼボットの姿を探した。まだ城ん中にいるのかな…。
城の裏手に出る扉の前を通りかかった時、その向こうから声がした。姫とゼボットの声だった。
「そうですか。このからくり兵にエリー姉様の名を…」
「いいんだぞ、笑っても。お前が笑っても僕は気にしない」
はっとして俺達は聞き耳をたてる。盗み聞きは少々気が引けるが、やはり興味もあった。何よりマリベルがこれ以上ないってくらい真剣な顔つきで扉に張り付いて離れないから仕方がない。まったく女ってのは。
ていうかゼボットは一般人のくせに、王族にタメ口きいてて無礼だと思った。どうでもいいが。
「いえ…。エリー姉様の事、まだ許して頂けないのですね。あれは事故だったのですよ。エリー姉様だってあなたを置いて一人でいくなんて…」
「分かっているさ。でも僕はエリーを許せない…。僕を置いていってしまうなんて、許せる訳がない……」
「だからからくり人形で自分を慰めているのですね」
「そうさ!彼女は死なない。絶対にだ」
「……」
それきり会話は止まった。
「ふーん、だんだんゼボットさんのナゾが解けてきたわね…」
マリベルが一人頷く。つまり、ゼボットはエリーっていう、姫の姉さんと仲が良かったんだな。でも事故で死んでしまったと。それ以来一人であの研究所に隠って、エリーの面影を追い続けてたってわけか。
気の毒だとは思った。でもやはり理解は出来ない。許すも許さないも無いと思うんだけどなあ。作り物の機械を代わりにするってのも、それで満足がいくとは到底思えない。俺が、大事な人間を失った事がないからそう思うんだろうか。
解らないまま、俺達はそっと扉から離れた。


そして俺達は、言われた通り詰め所へと再び戻って来る。ヘインズ兵士が待ち構えていた。
「何はともあれ、これでおぬし達の傭兵としての任は解かれる事になる。今まで御苦労であった。その働きに応じて給金を渡そう」
あ、そうか。傭兵ってのは報酬貰えるもんだった。すっかり忘れてたぜ。今までの冒険はそんなもの無かったからな。
…と受け取った金額は、1200ゴールドだった。え、こんだけ?!
「またいつかこの国に何かあった時には、是非駆けつけて来てほしいものだな」
………。
こうして、俺達の傭兵生活は終わったのだった。
「なあアナゴン、このお金でなんか旨いもん喰おう!」
そんな余裕はありません小僧。
「えー、これっぽっちなの?命かけて戦ったわりには安いわよねえ」
まったくだ。一人頭300ゴールドだぞ。それだけじゃない。任務中に買った武器防具とか宿泊費とかの経費を考えたら全然赤字じゃねーか!割に合わないとかそーいうレベルじゃねーぞ!これだったらまだ魔物倒して手に入れた金額の方が高いわ!!
…まあ、色々あった後でこの国も以下略。文句言わずに受け取っておこう(散々言ったけど)。ああ、大人すぎるぜ俺。
なんかドっと疲れた俺は早々に城を後にする事にした。あまりいい思い出のないこのフォロッド城を。



エスタードに帰る前に、ゼボットの研究所を訪ねた。ゼボットとエリーは既に城から戻ってきている。
顔を見せると、案の定ゼボットはこちらを見ようともせず言い放つ。
「またお前達か。もうこの国にもこの僕にも用はないだろう?もう誰の顔も見たくないんだ。僕の事は放っておいてくれ。僕にはエリーがいる。それだけでいいんだ。もう他には何も必要ない」
それきり何も言わなくなる。別れの挨拶もさせてくれないのかこいつは。
まあ、さっきの話を立ち聞きした後だからな。あれこれ文句もあったが、黙って去る事にした。
ゼボットがそれでいいって言うんだから、俺には何も言う事はない。間違っているとかいないとかの問題じゃないしな、こういうのは。最後の最後まで理解は出来なかったけど。


なんとなくスッキリしない気分だが、ここでの役目は終わった。
現代に蘇っているであろうフォロッドを確認すべく、俺達は元の時代へと戻っていった。
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