ドラクエ7冒険記 <さくさくDQ劇場

FILE:50「悲しいね」
デスマシーンは砕け散り、戦いは終わった。
俺達が引き返そうとした所に、トラッド兵士長とゼボットが駆けつけてきた。ちゃっかり全部終わった後に来やがったな。いいけど。
「先程のすさまじい音を聞いてもしやと思ったが…。いや、さすがはアナゴン達!こうも見事に敵の親玉を倒してしまうとはなんという強さよ。礼を言うぞアナゴン」
兵士長が初めて、俺達に笑顔を見せながら言った。
「これでこの国からからくり兵の恐怖は消え去ったのだ。私はこの喜びを皆に伝えるため城へ一足先に戻るとしよう。諸君らはしばらく休んでからゆっくり帰ってくればよい」
そして急ぎ足でこの場を去って行ってしまった。忙しい奴だ。
「やれやれ。ほんとに長い戦いだったわねー。アナゴン、さっさとこんな所離れましょ」
「やったなアナゴン!これでこの国は救われたんだ!」
「ウガーッ!オラ達勝ったぞーー!」
国の存亡をかけた戦いにも大勝利したし、これにて一件落着ってとこか。ものものしい雰囲気からようやっと解放されて、皆もそれぞれ盛り上がっている。
ふと見るとゼボットが、奥の大きな機械の前でで何やらつぶやいていた。
「ふん…、修理用の道具だけか。あのからくり兵達はここで造られていたわけではないのか。やはりこの世界で造られたモノではないという事か…」
何しに来てんだよオマエは。
国を襲った未曾有の危機が無事去ったってのに、何の感慨もないらしい。まあこいつの場合不思議でもないけどな。
その時。
「お前達、強いんだな」
ゼボットは俺達の方を向いた。
「人間がそこまで強くなれるなんて知らなかったよ。もっとも僕にはマネ出来そうもないけどね…。
 僕はもう少しここを調べたい。だから放っておいてくれ」

そう言ったきり、一人また没頭モードに入り込んでしまったゼボット。もう誰の話も聞き入れる様子はない。
「ゼボットのおっちゃんのおかげでオイラたちラクできたんだよな」
「ほらほらアナゴン。ゼボットさんなんか放っといてさっさと行きましょ」
「相変わらずだなゼボットさんは…」
礼のひとつでも言ってやろーかとも思ったが、奴にとってはそんな事どうでもいい事だろうし何より聞く耳もつまい。まだ生き残ってるからくり兵とか魔物とかいるんだけどなあ。まあ本人がそう言うなら仕方ないか。死ぬなよ。



城に戻る前にフォーリッシュの街に立ち寄ってみた。からくりの拠点が落ちた事はもう既に兵士長によって知らされていたらしく、街は少しだけ元気を取り戻していた。もうからくり兵によって命が失われる事はない。人々は皆砦から出て喜びあっている。
「オレはあんなふうに、みんなの喜ぶ顔が見たくて旅をしているのかもな」
などとキーファが恥ずかしげもなくぬかす。
ぐるりと街の様子を見ていたら、ゼボットがエリーをつれてやってきた。生きてたか。
「まだこんな所にいたのかアナゴン。早く城へ戻った方がいいんじゃないのか?」
よけーな世話だ。お前だってそうじゃねーか。
うわーん!
その時、子供の鳴き声が響いた。外に出ていた小さな女の子がエリーの姿を見たのだ。一直線に駆けてきたかと思うと、エリーに殴りかかる。
「うわーん!お兄ちゃんのカタキー!!」
「ボウギョもーど。たーげっと ニンゲン。ハンゲキデキマセン」
エリーは抵抗せず、されるがままになっている。どうやら攻撃してきた相手が人間だと反撃しないようになっているようだ。
「何するんだこのガキ!お前達が助かったのはこのエリーのおかげなんだぞ!」
ゼボットが声を荒げる。しかし…。
「からくり兵じゃ…」
「からくり兵の生き残り?まさか…」
その場にいた街の人々は、エリーを恐怖と憎しみの目でとらえる。
考えてみれば無理もない。ついさっきまで彼らは、エリーとまったく同じ姿形をしたものに命を脅かされていたんだから。
「違う!エリーは僕が改造した!僕の友達だ!」
「信じられるもんか。どう見たってからくり兵だぞ!」
「うちの人にケガをさせたあのからくり兵とおんなじだ!」
「うわーん!!」
ゼボットの必死の弁解も、皆には届かない。しまいにはゼボットに非難の声だ。


結局皆の理解は得られず、ゼボットとエリーは去っていってしまった。ていうか連れてくんなよお前も…。まったく、嫌な場面に立ち会っちまったもんだ。何も言ってやれなかった俺も俺だが。
そこでふと思った。ゼボットがわざわざフォーリッシュに立ち寄ったのは、ひょっとしたら平和になった街をエリーと一緒に見ようと思ったからなんじゃないかと。
もともと人前に出る事を嫌う奴だ。それに拠点に攻め込む前にここに立ち寄った時は、ゼボットとエリーは「街の人が怯えるといけない」といって、街のはずれで待機してたんだ。からくりの脅威が去った事で、もう堂々と街を歩けると思ったんだろう。でも、人々の怯えや悲しみはすぐには消え去るもんじゃなかった。からくり兵への恐怖や憎しみは、皆の心に強く根付いたままなんだ。

…と、完全に俺の勝手な想像だ。確証はない。ゼボットに尋ねてみても答えてはくれないだろう。
だけど、俺はそう思ったんだ。
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