石頭ゼボットの説得を再び諦めた俺達は、今頃からくり兵の襲撃を受けているであろうフォロッド城へと急いで戻る事にした。しかし研究所から出てみると、そこには1体のからくり兵が待ち構えていたのだ。
「何という事だ!こんな所にまでからくり兵がやって来ているとは!」
反射的に武器を構える俺達。しかし、そのからくり兵の動きが何かおかしい。あさっての方向にふらふら歩いたかと思ったら、突然ぼしーっと煙を吹いてブっ倒れてしまったのだ。なんなんだ、壊れてんのか?
「とまった!?どうしたのだ…」
「何を大声を出している。騒ぐなら他所で…うん?」
騒ぎを聞き付けて現れたゼボットは、横たわるからくり兵を見て目の色を変える。
「ほう!こいつが例のからくり兵か」
感嘆の声をあげ、からくり兵に近付くとその機体を興味深そうに調べはじめた。そしてお得意の独り言が始まる。
「ふむ…なるほど、これは…。かなりのダメージを受けているようだな。しかしこれなら…うむ。 トラッド、手伝え。こいつを僕の部屋へ運ぶぞ」
やがてゼボットは顔をあげ、トラッドに向かってそう言い放った。どうでもいいけど何でこんなに偉そうなんだこいつは。いちいちカンに触るぜ。
「なにをする気だゼボット?……ふむ、そういう事か。よし分かった、手伝おう」
最初は怪訝な顔をしたトラッド兵士長だが、何を理解したのか素直にその言葉に従う事にしたらしい。
「アナゴン達は一足先に城へ戻れ。もしもの時は頼んだぞ」
兵士長とゼボットを研究所に残し、俺達はまたもや超特急で城に戻って来た。思った通り城はからくり兵の襲撃を受けている真っ最中だった。正面入り口付近はフォロッド兵とがからくり兵が激しく交戦し、騒然としている。
「ハカイ…セヨ。ハカイ…セヨ」
なとど機械的な声(当たり前だが)を発しながら、からくり兵達は次々に兵士に襲い掛かる。兵士達は城を守る為、必死になって抵抗している。早く俺達も加勢せねば!
城門の前では、あの気のいい門番が守りを固めている。
「おおっ、よく戻ってくれた。あんた達は城の中の守りを受け持ってくれ。もし俺達が城門を守りきれなかった時は……、後を頼むぞ!」
「からくり兵なんか1体もこの中へ入れるもんか!」
いつになく気合いの入ったその声に押されて、俺達は城の中に入った。…が、外から伝わって来る緊張感にいてもたっても居られない。もしここにからくり兵が入り込んで来たら、その時は外の兵士達が皆やられちまってるって事だ。想像するとゾっとする。
耐えきれず再び外に出る俺達。2人の門番に襲い掛かっていたからくり兵を一蹴した。あぶない所だったらしい。出て来て正解だったな。
今度は3体のからくり兵がこちらに向かって来るが、こっちはまだ全然余裕だ。一気に片付けようと…したその時だった。
びぃよんびぃよんびぃよんびぃよん
突如、妙な音な辺りに鳴り響く。すると目の前の3体のからくり兵が妙な動きを見せ始めた。いや、その3体だけじゃない。城に攻め込んで来た全てのからくり兵が、その場でぐるぐる回り続けたり同士討ったり、関係ない所へふらふら移動したりする。
「あれー、どうしたのかな?壊れちゃったのかなあ」
情況から察するにこの妙な音のせいなんだろうけど…。一気に気が抜けた。
「おおアナゴン、よく持ちこたえてくれた。もう大丈夫だ」
そこへトラッド兵士長の声が響いた。研究所から帰って来たのか。
側にはゼボットと、先程の壊れからくり兵がいる。こいつは何故かそのへんのからくり兵とは違って2Pカラーなのですぐに区別がつくな。
「ゼボットが研究所にやってきたあのからくり兵を改造してくれたのだ。そして我々の味方として蘇ったのだよ」
兵士長の言葉にゼボットの説明が続く。
「こいつの思考回路から、破壊のコトバを全て取り除いた。もうこいつは人を襲う事はない。自由になったんだ。ついでにからくり兵は、何者かに特別な音で操られていると分かったんでね。ちょっとこいつを使ってその音をいじってみたんだが、どうやら上手くいったようだ」
へー、まるでキカ○ダーの悪の組織みたいな連中なんだな。と解る奴にしか解らない納得の仕方をする俺。
「ボウガイオンパ ハッシンチュウ シュツリョク 80ぱーせんと」
そいつの顔を覗き込むと、やはり機械的な声で喋りだした。このびょんびょんいう音はこいつが出してて、これが出てる間は敵からくり兵は混乱しちまうって事なのね。
しかしアレだよな。ついさっきまでは「協力する気なんてさらさらない」とか言ってたくせに、壊れたからくり兵を見たとたんあっさり前言撤回しやがったなゼボットは。結局何ものにも勝るのは知的好奇心だって事なのか?まあ今回はそいつに助けられたから突っ込みはナシにしといてやるけど。大人だぜ俺。
「このからくり兵を使えば、敵のからくり兵はもう敵ではない。これで敵のアジトへ乗り込む事が出来る!作戦会議を開くぞ!いいな?」
会議好きだなアンタも。
「よし!…とその前に。アナゴン達や他の傭兵には休息が必要だな。では作戦会議は明日の朝一番に行う事にする。アナゴン、御苦労だったな。今日はゆっくり休んでくれ。ゼボットもな」
「ああ、どうやらまた沢山の仲間が作れそうだからな」
傷ついた兵士達の介抱を手伝って、寝場所のない俺達は床の上に寝転がった。王の間の絨毯の上だ。豪華なんだかそうじゃないんだかよく解らない寝床だが、まあ仕方ない。どういう訳だか知らないけど宿舎が使えなくなっちまったみたいだからな。
先の見えない長い戦いの中、ようやっと光を見い出した兵士長の声はとてもイキイキとしていた。ゼボットは相変わらず無愛想だったが、協力する気にはなってくれたようだ。色々あったが確実に、俺達の戦いが良い方向へと向かい始めた事を実感させられる、長い長い一日だった。
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