俺達が見張り塔にやって来た矢先。外で異変が起こった。ボロボロに傷ついた兵士が城に現れたかと思うと、突然その場に倒れふしたのだ。
…何かが始まる。そう予感した俺達は踵を返し、兵士が運ばれた詰め所へと急いだ。
「何っ、フォーリッシュの町が落ちたというのか!」
その兵士は、フォロッド城からフォーリッシュの町に派遣されていた兵士の一人だったようだ。瀕死の重傷を負いながらもそいつは事の次第を知らせようと、力を振り絞って答える。
「は……、全滅ではありま……せんが、もはやからくり兵を……げふっ!」
「しっかりしろ!気を確かにもつのだ!」
いや、もう休ませてやった方がいいと思うぞ。ていうか今にも死にそうだそいつ。
「もはやからくり兵を防ぐだけの力はなく、既にこの城へ……うぐっ!」
「わかった、もういい。その体でよく知らせに来てくれた。 全兵士と傭兵に戦いの用意を急がせろ!いけっ!」
「ハッ!」
そしてトラッド兵士長は俺達に向き直った。
「アナゴン、諸君らにはもう一度私と共にゼボットの所へ行ってほしい。もう時間がない。こうなったらあいつの力を借りるのも仕方ない…」
どうやら、なりふり構ってる場合じゃないと分かったらしいな。
事態は急速に動きだし、一刻を争う。俺達はゼボットの研究所に向かう為、緊張と混乱が入り交じるフォロッド城を後にした。
「さあ急ぐぞ!ゼボットの研究所は西にある。分かっているな」
分かってらい!ていうかついさっき行ったばっかりだっつの。
「えー、兵士長連れて行くの?あたしちょっとイヤかも」
…本人の前であんまりそういう事言うなよマリベル。
俺達5人は超特急でゼボットの元へとやって来た。敷地内に入ると、トラッド兵士長はどこか遠い目をしてつぶやいた。
「もうここへは来るまいとあの時誓ったはずなのに…。また来る事になるとはな」
ゼボットの部屋の本棚にあった手紙から察するに、兵士長とゼボットは兄弟らしいが…。って今はそんな事を詮索している場合じゃないか。
中に入ると、先程ゼボットがいじっていた人型のからくりが置いてあった。近付いてみると、胸のあたりに「こんにちは、わたしはエリーです」といったパネルがぱたんと現れた。どうやら挨拶をしているつもりらしい。なんかお粗末だなあ。
「ゼボットとは私が話す。アナゴン達はここで待っていてくれ」
研究室。机に向かって何やら作業中のゼボットは、トラッド兵士長の突然の来訪に何の反応も見せなかった。
「ゼボット、もう一度だけオレの話を聞いてくれ。ついにフォーリッシュの町の守りが崩れてしまった。次は城が襲われるだろう」
「……」
ゼボットはやはり無視を決め込む。なおも続ける兵士長。
「もう一度頼む。からくり兵を倒す為にお前の力を貸してくれ」
「しつこいなトラッドは。前にも言っただろう?そんな気はさらさら無いって」
ようやっと口を開いたかと思ったら。まあこういった応えが帰ってくるだろうとは思ってたけど。
「オレ達の生まれ育った国が滅びようとしているんだぞ!解らないのか?」
「いいじゃないか。人間はどうせいつか死ぬ。今死んでもいつ死んでも同じさ」
じゃあテメエ今死んでみるかコラァ!!と斬り掛かろうか思ったがグっと耐える俺。
「お前……くっ!」
トラッド兵士長は、ゼボットに背を向けた。
「アナゴン、やはりこの男に協力など頼んでもムダなようだ」
って早えーなオイ!もう諦めちゃうの?!
「すぐに城へ戻るぞ!こうしている間にも城にヤツらが迫ってきているかもしれん!」
その前にこいつ一発殴っていいですか。
大体、国が滅ぼされるって事は自分も滅びるって事だろう。それでもいいっていうのかゼボットは。今死んでもいつ死んでも、誰に殺されても同じだって言いたいのか。俺には理解不可能だ。
ゼボットは、それきり机に向かい、うわ言にように呟いていた。
「そうさ…。人間は死んでしまうのさ。彼女みたいに…。死んだらそれっきりさ。もう動く事はない。もう喋ることはない…」
それを聞き、トラッドはやりきれないといった表情になる。
「ゼボットめ…。エリーの事をまだ気に病んでいるのか。あれはお前の…」
俺達は顔を見合わす。やっぱりあの偏屈は何か訳ありだったようだ。
「彼女?もしかしてゼボットさんは誰か大切な人を亡くしたのか?」
「死が必ずしもその人の価値を無くしちゃうとは限らないわよ。もしアナゴンが死んでもあたしはアナゴンの事忘れないもの」
マリベルよ。嬉しいが何故死ぬのが俺なんだよ。
「オイラはまだ死にたく無いぞ!食べたいものいっぱいあるしな!」
…真理だなガボ。それ、ゼボットに言ってやれよ。
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