というわけで、新しい世界に来た俺達だ。もう「何色の石版をはめて…」とか「びょいーん」とか、ワンパターンだしいいかげん飽きたので省く事にしたのでよろしく。
この世界は闇に覆われてはいない。普通に昼間だ。という事はエンゴウの時みたいに、何らかの事件が起こる前の状態なんだろうか。
とりあえず、まずは町だか村だか探さないとな。
しばらく歩いていると、目の前にモンスターが立ち塞がった。すっかり日常だ。
初めて見るヤツだった。全身が無機質に青くピカピカしていて、片手にハンマー、もう片手に斧を持っている。なんだか見るからに固そうだ。まあこれまでの経験上、その辺をうろついてるモンスターにさほど怖いのはいない。だから最初はたいした危機感も感じずに対峙したんだが……。
そいつは強かった。1ターンに2回攻撃してくる上に、俺達メンバー全員に打撃を与えてきやがる。しかも攻撃力も防御力もやたら高いので、倒すのに文字通り骨が折れた。……痛い。
俺達はボロボロになりながらからくも勝利し、町を見つけると大急ぎで移動したのだった。
その町に一歩踏み入れた途端、入り口付近にいた兵士に怒鳴られた。
「むむっ!なんだお前達はっ!? 名を、名を名乗れいっ!」
泣く子も黙るツッコミ系美少年アナゴン様は今日もさすらっています。
「…ふむ、なるほど。旅の者か。からくりどものうろつく中、よくここまでたどり着けたな。悪い事は言わん。早々にこの地を離れられるがよかろう」
俺の素敵に唐突な自己紹介をさらっと受けた兵士は、あっさり納得して去っていった。
その背中を見送りながらキーファが呟く。
「なんだか、ずいぶんとものものしい町だな」
俺達は町の中をざっと見回してみた。しんと静まり返っている。人の気配はあるんだが、どうも様子が変だ。どうやら異変はもう起こってるみたいだな。
この町、フォーリッシュの特徴はというと、まず家屋が2軒しかないのが目についた。宿屋と武器防具屋だ。町の北西は分厚い砦に囲まれていて、どうやら町の人間はそこで生活しているらしいのだ。砦は南東のほうにも一か所あるが、北西のものとは違って小さかった。
そして一番異様なのは、俺達がさっき戦ったあの青いヤツの残骸が、砦の周りにいくつも佇んでいる事だった。戦った時も思ったが、こいつら全然表情ないのな。攻撃する時もされる時も、死ぬ時でさえもその顔からは何の意志も伝わっては来なかった。無気味だ。
恒例の聞き込み捜査から、町はこのモンスター、「からくり兵」達から襲撃を受けているという事が分かった。その為に人々は砦を築いて、戦い、身を守りながら暮らしているのだという。砦の中を見てみたが、城から派遣されてきた兵士達と共に、慣れない戦いの日々を送る一般人の姿がいくつもあった。老いも若いも男も女も、なんとかこの町を守ろうと必死になっている。過去のダイアラックの男達とはエラい違いだな。痛々しいと思う反面感心してしまう俺だった。
しっかし、相手が悪りいなあ。あのからくり兵って奴ほんとに強かったしなあ。とてもじゃないが、この街の人間全員が束になってかかっても、からくり兵にかなうとは到底思えなかった。
ま、それを何とかする為に俺達はここに来たんだけどな。あのからくり兵がふつーに雑魚として配置されてるって事を考えると、今回はけっこう厳しい戦いになるかもしれない。こっちも力をつけておく必要がありそうだ。
具体的にどんな行動を起こすべきか決める為、さらに情報を集める事に。俺達は北西の大きな砦へと入り込んだ。2階にある入り口をくぐったらいきなり教会だった。どういう造りなんだ。
教会内の階段で1階へ降りた所で、城から派遣されてきた兵士達がテーブルを囲んで何やら話し込んでいるのが目に入った。街を守るための会議か何かの最中なんだろうか。とりあえず見物してみる俺達。
「…以上で、作戦会議を終わる!何か質問はあるか?」
やがて一番偉そうな奴のその言葉に、部下らしき兵士達がすかさず反応する。
「ハッ!ありません。兵士長どの!」
「うむ…。よいか、くれぐれも早まった事をするんじゃないぞ」
「ハッ!承知しております!」
「では、私はフォロッド城へ戻るとしよう」
「ハッ!お気をつけてお帰りください!」
こいつらなんでいちいち言葉の最初に「ハッ!」って言うんだろう。規則か?
会議を終え、偉そうな奴、兵士長は部屋から出ていく。その時俺達に気付き、じっと見下ろしてきた。決して若くはないが、老けてもいない。隆々とした体格の男だった。
兵士長が俺達に声をかける。
「うむ?お前達は何者だ?町が雇った傭兵か」
傭兵?そういう風に見られたのは初めてだな。
俺やキーファはともかく、マリベルやガボはどー見てもそんな感じじゃないと思うが。
「命のないからくりなどに無駄に命をくれてやる必要はない。お前達も無理はするなよ」
俺達の答えを待たず、そう言い残して兵士長は去っていった。その背中には戦士の風格が感じられる。うむ、なかなか渋みのあるキャラクターだな。
しかしマリベルはなんか不満げだ。
「さっきの人ずいぶん偉そうだったと思わない?悪い人じゃないみたいだけど、なんかヤなカンジ」
こいつは自分を棚にあげる事が本当に上手いな。
キーファはキーファで何やら考え込んでいる。
「そうか、傭兵か。なあアナゴン、それも一つの手かもしれないぞ」
傭兵になる事がか?からくり兵を倒すのに、わざわざそんなモンにならなくても出来ると思うけどなあ。だいたいお前王族だろう。よそに仕えてどうすんだよ。
そしてガボは何やら落ち着かない様子だ。どうしたんだ?
「くんくん……。ん!ここには何か食べ物がありそうだぞ!」
何聞いてたんだお前は!!
まったく、大丈夫なのかこのパーティー。今さらだけど不安になってきた。バラバラじゃねえか。
…いやいや、気を取り直そう。聞き込みを再開しよう。今後の方針を決めるんだ俺。
嫌な不安を忘れるためにも、気分を切り替えて砦内の人間に片っ端から話を聞き情報を集めていく。しかし食堂で、飯を喰っている奴に話し掛けたら、
「腹が減っては戦は出来ぬと言うだろ?どんなに追い詰められた時でも、飯を喰う余裕は持ちたいものさ」
誰もそんな事聞いてねーんだけど。
聞き込みでこういう見当違いな返事が帰って来るのはむしろ日常茶飯事だから今さら突っ込むのも何だが……。
そいつの言葉に嬉しそうに反応した奴がいた。ガボだ。
「オイラはいつでもどんな時でも飯が食えるぞ。えらいだろ、アナゴン!」
胸を張る。
…………うん、偉いね。
俺はそう返すので精一杯だった。ほんとマジ、大丈夫なんだろうか。これから先。
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