「おおっ!ここが動物だらけの町ってわけだね。よし、早速動物達から話を聞いてみるだよ!」
きこりのおっさんを連れて再びこの町にやってきた俺達は、まず町の入り口にいる犬から事情を聞く事にした。まさか犬から事情聴取する日が……。いや、ぐだぐだ言うのはもうよそう。
きこりは犬の頭を撫でてやりながら優しく話し掛ける。
「よしよし、かわいい顔していい子だなや。さあ何も怖くないだよ。一体ここで何があったのかオラに教えておくれ」
「ワンッワンッワン!」
「あ……?何て言ったんだい?もう一度言っておくれ」
なんだか様子が変だな…と思ってたら、突然きこりが飛び上がって叫んだ。
「なっ、何てこったい。何を言っているのかさっぱり解らないだよ!」
なにー!アンタいきなり役立たず!?
「こりゃあ絶対おかしいだよ。もっと他の動物とも話をしてみるだよ!」
おかしいのはお前の方なんじゃねーのか。なんて言ってる場合じゃないか。
しかしいくら他の動物に話し掛けてみても、きこりはそれらの言葉を聞き取る事は出来なかった。あーもう使えねえな!何だってんだよ一体。
「ここの動物達は、俺達の世界にいる動物とは言葉が違うんだろうか」
なんて、めずらしくキーファが頭を働かせていてちょっと驚いた。でも、もしそうだったら今度こそ八歩塞がりだ。それだけは勘弁してほしい所だが…。
しかし、事態は思わぬ方向で解決した。
そのへんをウロついている物言わぬ人間に、もう一度話し掛けてみたんだ。相手の男は相変わらず言葉を発しない。そしたらきこりが過剰な反応を示したのだ。
「んんっ…??こいつはぶったまげただよ!こんなバカな事があるのかね!この男は人間じゃないだよ!姿は人間だが中身は犬だ!」
ナニーーー!ってなんか悪口みたいに聞こえるぞ。
「よしっ、こいつとなら話が通じるだよ!」
と、きこりは中身が犬の男と話を始めた。つっても喋っているのはきこり一人なのだが。こいつの場合「話す」というより「通じ合う」と言った方が合ってるんじゃないだろうか。まあどうでもいいが。
「ふむふむ…なっ、何だって!?」
何か分かったのか、おっさん!
「はるか昔、一匹の恐ろしい魔物にこの町が襲われた時…。土地の守り神達が現れたんだと。それは伝説の白いオオカミ!彼らは力を合わせその魔物に戦いを挑んだらしいだよ。だけんど魔物の力は強く、次々と白いオオカミ達は命を落としていったんだと」
ほう、それは大変だ。
…ってちょっと待てい!そんな大昔の伝説なんざ誰も聞いちゃいねーよ!俺はこの町に何があったか知りたいんだよ!
「こいつはえらいこった。もっと人間の姿をした動物から話を聞くだよ!」
俺の話も聞けーーーッ!!!
どうやら、「全ての動物人間から話を聞かないと謎は解けないよん♪」というヤツらしい。あー面倒くせー。
俺達はきこりを通して、人間の姿をしている動物を見つけては話を聞いていった。
「この娘は人間じゃないだよ。姿は人間だが中身はネコだ!」
はいはい。それで?
「白いオオカミ達はやっとの事、神の山にある魔封じの洞窟に魔物をおびきよせ…見事入り口の岩戸を閉めて魔物を封じ込めたんだそうだよ!だけんどその時の戦いで生き残ったのは、お腹に子供を身ごもったメス1頭だったんだと!白いオオカミ達の多くの犠牲によって封印が成功したってわけだね」
次は見た目がじじいの馬から話を聞く。
「つい先日、この町は恐ろしい一匹の魔物に襲われたんだそうだ。その魔物が魔法の力で、人間と動物の姿を入れ替えたんだってよ。なるほど!だからこの町では人間の姿をしているのが動物で、動物に見えるのが人間ってわけだ!」
そういう事か。いくら動物になっても、言葉までは操る事は出来なかった。だからきこりと話す事も出来なかったってわけだな。
「つい先日、町を襲った魔物はこの町の西にあるという神の山の方から来たらしいだよ。神の山といやあ遠い昔、白いオオカミ達が魔物を封じ込めたという場所…!ひょっとしたら神の山で何か大変な事が起こっているのかもしれねえだな」
よし、そこまで解れば十分だ。西にある山のぼって魔物がいたら倒しゃいいんだな!
こうしてようやっと道が開け、解決の糸口が掴めたのだった。なんで動物ごときが人間の間で語られてる伝説にそんなに詳しいんだよとか、動物のくせに説明が回りくどいんだよとか、そういったツッコミはこの際しないでおいてやろう。大人だぜ俺。
西の山に行く前に、町長宅の納屋にいた子供が気になったのでちょっと顔を出してみた。相変わらず、首輪がきつく絞まっていて息も絶え絶えの状態だ。
「何て事するだまったく!カギまでかけるなんてよ。こんなにきつく締めたんじゃまともに息もできねえだよ!苦しかったろう。今外してやっからな」
きこりはその子供に近寄ると、懐から一本のナイフを取り出して首輪の鍵穴をつつきだした。
「ほれっ、こうしてきこりのナイフでちょちょいのちょいっとな。…よーし外れた」
すげえやおっさん!でも犯罪に使うなよ。
「どうだ、楽になっ……!?」
その時、首輪を外された子供は、ものすごいスピードで納屋から出ていってしまった。
「あっ?おい!まてってば。こら!」
キーファの制止の声も空しく、子供の姿はあっという間に見えなくなった。
「…ったく、すばしっこいヤツだぜ」
「わっはっは!とりあえずは元気なようで一安心だなや」
まったく、せっかく助けてやったってのに礼の一つも言えないのか。無礼な奴め。
…いや、やっぱりあのガキも、魔物の魔法で姿を変えられた動物なんだろうな。だったら礼なんかするはずねーか。
こっちの方は解決した。俺達は町を出て、西にある神の山目指して歩き出す。
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