というわけで、俺達は復活したエンゴウにやって来た。
ウッドパルナの時と違って見た目なーんも変わってなくて驚いた。家屋の数も配置も、殺風景な茶っこさもそのまんまだった。とてもあれから何百年も経ってる村だとは思えない。
「あら、貴方達も旅の方ね。ようこそ、エンゴウの村へ。温泉に入りたいなら村のまん中にある井戸の中よ」
村の入り口にいた女がこんな事を言ったとたん、キーファとマリベルの顔が輝いた。
「なあなあアナゴン、その温泉って、こここ混浴かな?」
知るか。
「温泉!温泉入りたーい!!」
やかましー!俺たちゃ観光に来たんじゃねーだろ。
そりゃあ、温泉が出来てるっつーのにはちょっと感心したが。
温泉温泉と騒ぐ二人を無視して村を歩いてまわる。
マジで井戸の中に温泉があるらしく、村のまん中にある井戸の中から湯気がもうもうと立ちのぼっていた。まあ温泉があるのはいいとして、なんで井戸の中なんだよ。困らないのか。
目に見えて変化しているのはそれくらいだが…。あ、パミラの住処もそのまんまだ。今は誰が住んでるんだろ。
「おお、お客さんか。いらっしゃいいらっしゃい。わしが占い師のパミラだよ」
何百年生きてやがんだこのババアー!
俺のツッコミの手刀がうなる。
「おや?わしの名前、なんかヘンだったかね。この名はわしの家系の中でも占いの力を持つ者に与えられる特別なものなんだよ。なんでも昔この地が災いに覆われそうになった時…、初代のパミラ様が炎の神の使いを導いて、災いを取り払ったとか。それに初代のパミラ様は薬師としても有名だったようだ。わしはさっぱりだけどね」
なんだそういう事か。俺はてっきりあのパミラが実はバケモノか何かだったのかと思ったぜ。得体の知れないバアさんだったから別に不思議じゃないし。
それにしても、「炎の神の使い」って俺達の事だよな。ずいぶんとまあご大層に伝えられてるもんだ。でもその伝わり方だとなんかパミラの方が偉いみたいだぞ。
「おっといけない。あんた達占いに来たんだろ。どれどれ、カオを見せてごらん……」
そう言ってパミラ(現代版)が俺の顔を覗き込んできた。うーん、過去のパミラと瓜二つだ。思わず時間の流れを疑ってしまう。紛らわしい事この上ないな。
「おや…これは驚いた。何も見えないぞ。」
ああ?
「ふむ…。しかしあんたからは何やら不思議な力を感じる…。どうやらその力がわしの占いの目を届かなくしているようだね」
本当かよ。
口では何とでも言えるよな。
「ふう…。わしの見たとこはこんなものだね。さて見料を頂こうかね。5ゴールドに負けとくよ。さっ、払った払った!」
何ー!?なんも見えなかったくせに金取るんかいこのババア!
しぶしぶ5ゴールドを支払って、俺達はパミラの店を後にした。もう二度と行くまい。
……と思ったんだが。とある子供の落とし物を探すために、またパミラに5ゴールド払う事になるのだった。畜生。
その子供から、礼にと「ちいさなメダル」というものを貰った。一体何の役に立つんだか解らないけど、くれるっつーんなら貰っておこう。
気を取り直して、今度は村長の家に行ってみた。過去の村長と違って、今の村長はやけに身なりがいい。ハゲなのは一緒だったが。遺伝か?
「おお、旅の方ですな。いやよくいらっしゃいました。どうですかこの村は?」
茶色いですね。
「おお!気に入って頂けたようですな。それは何より何より。次の旅先では是非皆さんにこの村の事をお伝えして頂きたいですな。沢山の方にこの村を訪れて欲しいと私は願っておるんですよ」
つまり俺達を宣伝の道具にしようという事ですねふざけんな。
この村長、どうやら村おこしにやっきになっているようだ。温泉もその為に作ったみたいだな。でもそういうのって大抵ハズれるんだよなー。
しかしアレだな。村長の家では「炎の神の民」とか「ほむら祭りが…」とかいう言葉を一切耳にしなかったけど。
怪訝に思った俺だが、村人達と話して回ったらその疑問は解消した。
「あんたらは知らねえかもしれねえが、この村にはほむら祭りって祭りがあってな。なんでも炎の山に住む炎の神に捧げるそれはもう盛大な祭りなんだってよ。だがオレが住み着いてからもう何年も経つのに、祭りなんてありゃしねえのよ」
なんと、ほむら祭りが廃れてしまっているのだ。にわかには信じがたいが事実らしい。実際ずっと祭りは開かれてないみたいだし。村の四隅にはちゃんと火がかかげられているが、どうも惰性で燃やしてるだけみたいだし。そして、エンゴウのシンボル炎の山の入り口では、
「おっと、旅の人。ここは炎の神様が住むという神聖な山なるぞ!なーんてね。今どき神様もへったくれもあるもんか。何でおれがこんな所の番人みたいなマネをしなくちゃいけないんだよ」
ときたもんだ。ちなみに過去、ここはほむら祭りの時以外は番人がガッチリ見張っていて誰も入れないようになっていだんだが。今は番人もこの通りで山の中は入り放題だ。
ああ、信仰心が無くなってたんだなー。俺達は顔を見合わせて頷いた。
つい最近までいた過去のエンゴウでは、皆あんなに炎の神を崇めてたってのにな。
あの信仰心の為に、俺達もパミラもあんなに苦労したっていうのにな。
何百年も経っちまうとこの通りってワケか。別れ際に過去の村長が言ってた「これからは今以上に炎の神を崇めて暮らしていく事にしようと思うとる」という思いは、今には紡がれなかったんだ。
正直、あの信仰の熱心さにはうんざりしていた。でもこうやってキレイに無くなっているのを目の当たりにしちまうと、なーんか寂しいもんがあるなあ。
ウッドパルナの時は長い時間を経ていい方向にいってたのに。そういうパターンばかりとは限らないんだな。
そして俺達は複雑な思いのまま、炎の山で緑の石版をゲット。火口から謎の神殿内部にある青い小部屋へのワープゾーンを発見し、エスタードへと帰っていったのだった。
…まあ、こういう事もあるさ。
あの時俺達はエンゴウで出来る限りの事はやったし、そのためエンゴウは救われて今に蘇る事になったんだ。あの変わり様は、まあなるべくしてなったと思おう。
そう言い聞かせて気持ちを切り替えて、次なる冒険へと挑む俺達だった。
あ、そうそう。エンゴウの温泉とやらもついでに見にいったんだ。マジで井戸の中にあってしかも混浴だった。そこでキーファがババアのヌードをまともに拝んでしまい、メチャメチャ萎えまくってたのが笑えた。
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