やだなー。何言われるのかなー。
恐る恐る城の玉座の間に出向いてみると、そこには王様、大臣、兵士のいつものメンバーの他にリーサ姫、ボルカノ親父、アミットさん、そしてガケじいがいた。一体どういう顔ぶれなんだ?
揃ってやってきた俺達を確認した王様はゆっくりと口を開いた。
「キーファよ。そしてアナゴン、マリベルよ。よくぞ戻って来た。お前達がわしに隠れ何をしていたかは、そこの老人が全て話してくれたぞ」
ああ、なんか叱られそーな雰囲気。思わず逃げ出したくなる。
しかしそんな俺にお構いなしに王様は続けた。
「……その老人の話が全て本当なら、この世界にはかつてたくさんの島があり……。何らかの理由により消えてしまった島を元に戻す冒険をしているのだそうだな。そしてお前達が再びこの城に戻った時、新しい島が現れるはずだ…と。正直わしは半分疑っているが、一応調査団にその島を探させている。もしも本当に新しい島が現れていなら…。キーファ、お前の事もそこの老人の話も信じよう。」
どうやらガケじいは全てを王様に話して聞かせたらしい。王様はまだ完全に受け入れられないみたいだが…。この様子から見ると、結構いい方向に受け止めてるかもしれないな。
その時、調査団の兵士が玉座の間に報告に現れた。すごいタイミングだ。
「ちょ…調査団よりバーンズ王に報告いたします!先日現れた北西の島よりはるか北に新たなる島…。火山の大陸を発見しました!」
よっしゃ御苦労ッ!間違いないエンゴウだ。やっぱりこの世界に現れてたんだ!
とにかく、これで俺達の正しさが証明されたって訳だ。さーどうする王様?
王様の表情を伺った。意外と冷静な顔つきだ。報告にあがった兵士を下がらせて、俺達に視線を戻す。
「これでどうやら間違いないようだな。世界には本当はたくさんの島があり、何故かこの島だけが世界に残った。そして今我ら人間の力で、消えた島を世界に取り戻す事が出来る!…老人よ。全てはそなたの言った通りだったな」
「いかにもじゃよ。ふぉっふぉっふぉっ」
ガケじいが胸を張った。昔から否定され続けてきた事がようやっと認められたんだから、そりゃあ嬉しいだろう。
俺も何だか誇らし気な気分だ。何たって、失われた大陸を2つも復活させたんだからな俺達は。ふつーじゃ出来まいこんな偉業。威張りたくもなるってなもんだ。
「先日の会議ではそなたを信じずすまなかった。心より詫びさせてもらおう。そしてキーファよ。お前達の働きがなければこの事は永遠に解る事はなかったかもしれん。大活躍だったな。礼を言うぞ」
はっはっは。やっぱ、王様クラスの奴に誉められると達成感が違うよなー。もっと誉めれ。
しかし王様は急に表情を厳しいものに変え、有頂天になる俺達の顔を見据えた。
「だがな……。キーファ、お前が今後も旅を続ける事は、わしは断じて認めん!」
えーーーーーーーー。
…ってまあ、当たり前と言えば当たり前かもしんないけどちょっと王様。
「お…王よ!それでは約束が違うじゃろ!」
突然の展開にうろたえまくるガケじい。約束なんてしてたのねあんたら。
それを思いっきり無視した王様はさらに続ける。
「よいなキーファ。たとえ何があろうとお前は将来この国の王となる身だ。世界を元に戻す旅は他の人間に任せ、お前はこの国の事だけを考えるのだ」
「うむ、マリベルも王様の言う通りだぞ」
キーファの反論のタイミングを遮って、アミットさんがマリベルの腕を掴んだ。
「お前は女の子なんだ。危険な旅なぞわしは許さん。さあ、帰るぞ!」
「パパ!ちょっと!ちゃんと帰るからひっぱらないでよ!」
マリベルはアミットさんに腕を引かれながら、やかましく玉座の間を後にした。
あーあ、二人揃って捕まっちまった。やっぱし内緒にしといた方が良かったんじゃねえの?そりゃあ王様達の言い分は正しいけどさあ…。
と、半ば人事のようにその様子を見ていた俺に親父が近付いてきてこう言った。
「アナゴンよ。オレはむしろお前にそんな勇気があった事を嬉しく思うが…。男なら引き際も肝心だ。さあ、今日のところは家に帰るぞ」
俺もかい。
……まあ、ここは流れに従って大人しく消えるべきかな。ここで俺が何か言ってどーにかなるって訳でもなさそうだし。
俺は親父の言葉に素直に頷き、共にフィッシュベルへと帰ったのだった。
「慎重な男だとばかり思っていたお前がこんな事をするとは予想外だったな…。」
夕食の後。親父は俺の顔を見ながらしみじみとこう言った。
「まあオレはバーンズ王やアミットさんのように頭ごなしに反対はしないが
…。いずれにしても、人に心配をかけて冒険をするのはあまり感心しないな。」
うーん。親らしいねえ。
そう言われちまえば何も言えないんだがなー。
「…で、お前としてはどう思っているんだ?今後も冒険を続けたいのか?」
うん。
「たとえ一人きりでも行きたいと思う程、その意志は固いのか?」
うん。
「そうか…分かった。ならばオレもお前を引き止めるのはよそう。お前も男だ。一人でどこまでやれるか試すのもいいだろう。ただし、決してムリをしてはダメだぞ。危険だと思ったら逃げる事も一つの勇気だ。 さあ、何にせよ今日はもう遅い。今夜はゆっくり寝るんだぞ、アナゴン」
キーファやマリベルも、今こうやって親と話し合ってんのかな…。
そう思いながら俺はベッドに潜り込んだ。
俺が親父の最初の質問に即答したのは、世界を救いたいとか冒険が好きだとか、そういった理由からじゃない。元々キーファの野郎に巻き込まれる形で始めた冒険だけど、それなりに得たものや学んだ事が多かったし、思い入れがあったというのも理由の一つだが。
一番の理由はただ単に人に言われて冒険を止めるのがなんかムカつくからだ。
それに、最初にあの遺跡に選ばれて、別世界で冒険をして、島を現世に呼び戻したのは俺達なんだ。いきなりそれを人任せにしろってか。そこまで辿り着くのに色々苦労したのに、その結果を他人にそっくりさらわれるなんて冗談じゃない。その思いは、先にあの遺跡に目をつけて走り回っていたキーファが一番強いだろう。
2番目の問いに頷いたのは、一人でもどうにかなるかなーという思いがあったからと、マリベルやキーファが絶対黙っていないだろうと思ったからだ。奴らどうせ意地でも冒険を再開しようとしてるに違い無い。俺は一人になりようがないんだ、絶対。
それに、俺一人が降りてもどーせまた強引に巻き込まれるだろうしな。
ふう、と溜め息をついた。こういう考えに即結びつくのがなんか情けない気がしないでもない。
まあいいや。今日はもー寝よう。親父に理解があったお陰で、冒険はこれで終りって事になはらなかったし。
結構気楽なもんだな俺。ていうか、このままあっさり終わっちまう気が全然しないんだよな。
何とかなるさ。最後に心の中でそう言って、俺は目を閉じた。
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