何だ何だと外に出てきた俺達。村の中央にある井戸の周囲、そこに村人達が集まっている。なにやら占い師風の格好をしたバアさんの話を聞いているみたいだが…。
確かあれは村の薬師で、パミラっていうバアさんだ。そういえば占いで予言をする事も出来るって聞いたな。
そのパミラばーさんは、村人達の中心で声を張り上げた。
「皆の者!今一度聞いてくれ!わしは見たのじゃ!炎の山が紅蓮の炎の柱を吹き上げ、村が…大地が、溶けた岩に飲み込まれる様を!」
ナニー!?
思わず顔を見合わせる俺達。このバアさん、占いで俺達と同じものを見たのか!?
パミラは続ける。
「火送りの儀が終わる時にこの村も終わりを迎える事になってしまうのじゃ!ほむら祭りを行ってはならん!絶対にならん!」
その時、また大地が揺れ動いた。
ゴゴゴゴゴ…
「むうっ、今の揺れはっ!皆の者、今の地震こそが…」
「炎の神が怒っているんです!パミラ様がおかしな事を言うからだ!!」
パミラの主張を一人の村人の声が遮った。その途端他の村人達も口々に言い出す。
「そうだわ!今のはきっと祭りの知らせなんだわ。ほむら祭りの時が来たのよ!」
「そうだそうだ。祭りをやめるなんて、それこそ炎の神が許しちゃくれないぜ!」
誰一人としてパミラの言う事に耳を貸そうとはしない。それどころか彼女の言葉に反して、何が何でも祭りをとり行おうという動きを見せている。あーあ。
そんな村人達の様子に、パミラは歯がゆそうに呟く。
「ええい、わからず屋どもめ。わしの占いが信じられんというのか?」
いや、そんな事ないぞーー。
「ええい!おぬしらには聞いておらぬわ!」
ガーン。
そんな。せっかく応援してやったのに…。
内心ショックの俺を置いて村人達の反論が続く。
「こればっかりはとても信じられないわ!そんなことあるわけないもの!」
「そうだよ!その通りだよ!」
どうやら村人達は相当炎の神とやらを信じきっているようだな。聞いた話だと、パミラの予言はよく当たるんだそうだ。その事実を知りながらこの反応…。信仰心なんかまったくない俺にとっては、その様子は半ば狂信的だとすら感じてしまう。こりゃあ説得させるのは至難の技だな。
「騒々しいぞ。一体何をやっておるか!」
そこに、騒ぎをききつけた長老が現れた。あんたの家の真ん前でギャーギャーやってたってのに今頃出て来たのかよ。
「あの…。パミラ様が、炎の山が爆発するって占いを…そのう……」
「何じゃと!そんなバカな……。むむ……」
村人の言葉を聞いた長老の顔が険しくなった。そしてちょっとの間考えると、村人達にこう言った。
「うむ、とりあえずは落ち着くのじゃ村の者達よ。騒ぎを大きくするでない。旅の方も不安そうにしておる。パミラよ、その話はわしの家で聞くとしよう。気になるなら旅の方も家に来られるといいぞ。さあ、他の者は帰った帰った!」
こうしてその場はおさまり、村人達は普段の生活に戻っていった。
パミラと長老は話をつけるため、そのまま長老の家に入っていく。そして俺達もそれに続いた。
「何故、あんな事を皆の前で言ったんじゃ」
「今朝、神のお告げがあった。それを民に伝えるのが予言師たるわしの役目じゃ」
長老の部屋にて。長老とパミラ、二人の話し合いが始まった。俺達は部屋の隅、階段の側でその様子を見守る。
「予言師?おぬしは薬師ではなかったかな。…まあ、どちらでもよいわ。いきなりあんな不吉な予言を聞かされては村の者も…」
「未来は予言の中にある。今はその不幸な未来をどう変えるか考える時じゃ!」
「しかしほむら祭りがまさに行われようというこの時に…」
「祭りを行ってはならぬ。祭りをとりやめにする事が、未来を変えるはじめの一歩じゃ!」
その言葉を聞いたとたん、押され気味だった長老が声を荒げた。
「祭りをやめる事は出来ん!それこそ村の民が炎の神の怒りを恐れ怯えてしまうぞ。祭りは今夜行う事とする!先ほどの揺れはまさに祭りの時が来たという知らせじゃ!そうじゃ!祭りじゃ!祭りを行えば炎の神はわしらをお許しになるハズじゃ!」
なんでそー言いきれるかなこのハゲ…。あーあ、話し合いっていうからもっとちゃんとしたのを期待してたのに。結局は炎の神の事しか見えてないときた。ていうか急だな、今夜かよ。
長老はそのままベランダから外に出て、村人達に大声で呼び掛けたのだった。
「村の者達よ!ほむら祭りの時は来た!今夜じゃ!今夜ほむら祭りを盛大に行うものとしようぞ!!」
「バカめが…早まりおって……」
部屋を出ようとしたパミラは、ふと俺達の前で足を止めた。
「おぬしらは……? そうか。旅の者じゃな。ならばさっさとこの村を……」
俺達を見るその目がきらりと光る。
「いや……見える………。おぬしらなら出来るやもしれぬ。おぬしら後でわしの所へ来てくれぬか。よろず屋の奥じゃ。頼む、この村を救ってくれ……」
来ました来ました。ようやっと俺達の出番ってやつがな。
そのままパミラの所へ。言っていたとおり、よろず屋の奥の部屋で俺達を待っていた。派手な絨毯が敷きつめられていて、大きい水晶玉から放たれる青い光に満たされている。いかにも占いに使う部屋って感じだ。
「おお、来てくれたか旅の者達よ。まず名前を聞いておこうか。あー、わしの名はもう知っておるようじゃから、よいな」
俺達はそれぞれ自分の名を名乗った。
泣く子も黙るツッコミ系美少年アナゴン様だ!
「オレはキーファ。キーファ・グランだ」
「あたしはマリベルよ。よろしくね、おばあさま」
「ふむふむ…。ではさっそくじゃがアナゴンよ。おぬしはわしの予言を信じるか?」
信じるも信じないも。
「いや、おぬしらが信じようと信じまいと予言は現実のものとなる。しかし予言は未来を告げるもの。そして未来は変える事が出来る!」
すいぶんと自信ありげだなあ。ま、俺達もあの幻を見てなければ、このバアさんの予言も信じてなかっただろうけどな。
「おぬしらにはこの村の未来を変えてほしいのじゃ。その力がおぬしらにはある。そうじゃ、やってくれぬか!おぬしらにしか頼めぬ事なんじゃよ」
OK!!
ここまでハッキリバッチリ言われちゃあな。引き受けてやるのが男ってヤツだろう。というか、もともとそのつもりでここに来たんだけど。
俺の気持ち良い返事をうけて、パミラも力強く頷いた。
「うむ!わしも炎の神がその意志で炎の山を爆発させるとは思えぬ。何かが炎の山で起こっているとわしは睨んでおるのじゃが…。炎の山へは祭りの時を除いてわしや長老でさえも立ち入りを許されておらぬ。まずは祭りの時を待たねばならぬじゃろうな。祭りは今夜行われる。それまでは宿で休み、英気を養っておくがよいじゃろう」
なら結局祭りがなきゃ解決にならねえんじゃねえか、というツッコミは置いといてやるか。
「炎の山かあ……。あたしはあんまり行きたくないなあ…」
「オレ達がこの国の未来を変えられるってんならやってやろうぜアナゴン!」
勝負は今夜だ。俺達は宿をとり、祭りが始まるのを待った。
やがて、外から人々のざわめきが聞こえるようになって……。
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