「ん……?ここは確か…」
キーファの声ではっと気付く。俺達は、あの神殿の台座の前にボーっとつっ立っていた。
「どうやら、戻って来たみたいだな。たしかその台に石版をはめて、地図みたいな物が完成したとたんオレ達は……。にしても、いったいあそこはどこだったのか……?それともオレ達は夢でも見てたのだろうか……」
そんなキーファをマリベルが思いっきり馬鹿にする。
「キーファ、あんたバッカじゃないのっ!あれが夢なわけないじゃないの!だいいち3人ともが同じ夢を見るのも変だし……。ともかく、ハッキリしてるのはあんたたちのせいであたしがあぶない目にあったという事ね」
まだゆーかこのアマ。
ともかく、俺もあれが夢だったとは思えない。ていうか向こうで買った武器防具も、拾った石版もちゃんと持ってるしな。俺達は確かにあのウッドパルナに行ったんだ。
「まあいいわ。無事に戻れたわけだし、ちょっとは刺激的だったから。 さてと…。あたしは家に帰るわ。ママがうるさいからね」
マリベルのその言葉を聞いたキーファが飛び上がった。
「げっ!オレも!また親父を怒らせちまう!
じゃあなアナゴン。後でまた連絡するから!」
言い残すと、さっさと一人去って行った。
「フン、失礼しちゃうわね。あたしには挨拶なしってわけ?
さあ、帰るわよアナゴン」
ま、これ以上ここに用はないし。帰るとするか。
しっかし、奇妙な体験をしたもんだ。バラバラになってた石版を一つにしたらあんな事が起こって、あんな大冒険をするはめになるなんて。たった数日の冒険だったけど、なんだか今までの俺の人生が360度ひっくり返っちまったくらいのボリュームがあったぞ。
色々後味悪かったけど、一つの村を悪の手から救っちまったんだからなー。
…なんて感慨にふけっていたらマリベルに怒られた。
「ねえ、アナゴン分かってるの?あたしは疲れてるの!早く家に帰りたいの!!」
あ、ハイハイっと。
フィッシュベルへと帰って来た俺はマリベルと別れ、自宅へと戻った。
「おやアナゴン!一体どこをほっつき歩いてたんだい!?」」
お袋の声もずいぶん久しぶりに聞く気がするな。
「キーファ王子やマリベルさんの姿も見えないって、そりゃ心配して。…ったく、皆にあんまり心配をかけるんじゃないよっ!」
あ、ハイハイっと。
俺のテキトーな返事を叱りつけるかと思いきや、お袋は急にはっとした顔になってこう言った。
「ああそうだったわ!それどころじゃなかったんだわ。 聞いてるかもしれないけど、この島のそばで新しい島が見つかったっていうのよ。その事で父さん、アミットさんと二人でお城に行ったんだよ。」
はあ!?
新しい島?しかもエスタード島のすぐ近くにだって?そんな事あるわきゃねーだろうが。もしそんな島が近くにあったら、とっくの昔に発見されてたろうに。
この世界は、海とエスタード島しかないんじゃなかったのか。
しかし外に出て街の人達の話を聞いてみると、どうやらマジらしい。「新しい島の出現」という、今までの平穏をブチ壊すような出来事に、皆は敏感に反応し浮き足立っていた。男は妙にそわそわしてるのに女は逆に冷静だというのがちょっと笑えたが。何にせよ、いつもののどかな空気とは違った、緊張感みたいなものが島中を包み込んでいるのが感じられた。
そういえばマリベルはこの騒動の中、どうしてるんだろうか。
ふと気になった俺は彼女の家に行ってみた……ら、グースカ寝ていた。
ゆり動かしてみても起きやしねえので叩き起こしてみたら、起き出したとたんどこかに走り去ってしまった。何なんだ。
…あ、そうだ。このニュースで、今一番騒いでそうな奴の顔を思い出した。
なんとなく胸騒ぎをおぼえて、俺はグランエスタードの城下町に行ってみる事にしたのだった。
城下町もフィッシュベル同様、島出現の話題でもちきりだ。噂によると城がその島に調査に乗り出すべく調査団を結成するそうで、今その会議が行われているらしい。うちの親父もアミットさん(言い忘れてたけど親父の上司。マリベルの親父さんの名だ)も今頃きっとそれに参加してんだろうな。
身内の恥、ホンダラもがこの騒ぎに乗じて何かくだらない商売を展開しようと企んでいるようだ。俺に「親父が城に呼ばれたのは本当か?」とか聞いてきて、正直に答えたらワケのわかんない聖水を俺に押し付けてきやがった。御褒美のつもりか?
「やや、これはアナゴン殿、いいところに来てくれました」
やっぱキーファが何かしたのか。
街と城の出入り口を警備しているいつもの兵士は俺の顔を見るなりこう言ったので、そう確信した。
「実は、キーファ王子が自分も会議に参加させろと騒ぎ出して…」
ああ、目に浮かぶぜ…。
「アナゴン殿も王子がわがままを言わぬよう説得してくださいませんか」
言っても無駄に決まってんじゃねーか。…とは、絶対こいつも思ってるだろうから口には出さなかった。ていうか、なんで俺ばっかそういう事任されるのかね。誰が何言っても聞きゃーしねーじゃんアイツ。
城に行ってみようと思ったが、会議中とやらで橋が上がっているために入れないらしい。
とりあえず、ガケじいの所にでも行ってみるか。石版の力で見たこともない場所に飛ばされた事とか、いろいろ報告もしたいしな。
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