ドラクエ7冒険記 <さくさくDQ劇場

FILE:17「争う痛みを胸に秘めて」
「うぐぐぐぐ……。まったく人間というのはどこまで卑怯な生き物だ!」
人の顔見るなりイキナリなんだこのカニ。
「お前達ぃ!親方様がいないと知っててわざとこんな時に来やがったな!」
あ、そうなの?!そりゃあタイミング悪かったなあ。っていうかそんなの知るか。
「だがな……。たかが人間ごとき、オレさま一人で潰してやるぜ!」
あんだぁカニふぜいが!味噌ひきずり出して喰っちまうぞ!!
カニ…チョッキンガーとの戦闘が始まった。どうでもいいけど特撮番組に出て来るお笑い系怪人みたいな名前だな。
たかがカニ。ぶっ叩いていればそのうち勝てるだろうとタカをくくっていたが、ちょい甘かった。何故なら攻撃力がさっきのゴーレム以上だったからだ。2回続けて攻撃をくらうとかなりヤバくなる。攻撃力だけでなく防御力も高く、奴が身を守るとマリベルのメラでさえその威力をぐぐっと減らされてしまう。

どれくらいの間戦っていただろうか。俺達が少しずつダメージを与え続け、ついにチョッキンガーは地に沈んだ。…あ、まだ息がありやがる。
「グウウ……。チッ…チクショウ!親方様さえいればこんな事にならなかったのに……」
さっきと言ってる事違うぞ。
その時、俺達の顔を憎々し気に睨み付けていた奴の表情が、驚きと喜びの合わさったものに変わった。
「あ…!ああっ!?お…親方様ぁ!」
え?
振り向いて見てみると、誰かが向こうからやって来る。………あれ?マチルダ?!
マチルダはそのまま狼狽える俺達の前を通り過ぎ、横たわるチョッキンガーを見下ろす位置に立つ。
「ようやく元凶が現れたようだな」
呟いたハンクが剣をぎゅっと握り直した。
しかしマチルダは無言で立ち尽くすだけだ。
「親方様!とどめをお願いしやす!アッシがだいぶ痛めつけておきやしたので!」
痛めつけられてんのはお前の方だろが。
……って。
「親……方…様?」
ザシュっ!!
マチルダは剣をゆっくりと抜いた…かと思うと、そのまま振り下ろしチョッキンガーを切り捨てたのだ。
「ひぃっ!そっ……そんな……!お、親方様ぁ〜!!」


今度こそ死に絶えたチョッキンガーを背にし、マチルダはこちらに向き直る。
俺達はもう何が何だか把握する事も出来ず、マチルダの言葉を待つだけだ。
ただ一人ハンクだけが、油断も隙も見せず彼女の行動を警戒し続けている。
「…アナゴンさん達、驚かせてしまいましたね。」
やっと口を開いたマチルダ。どこか憂いをおびたその声も表情も、相変わらずのものだった。
「しかし、その者の言う通り、私こそがこの災いの元凶。村の女が戻らぬよう、あの方よりカギの役をさずかった魔物の一人…」
……!!?
俺達は言葉を失った。目の前のマチルダの姿が、おぞましい魔物のそれに変わったからだ。
威圧感のある禍々しいデザインの防具に身を包んだ、まるで鬼のような形相の魔物に…。
「これが…今の私の本当の姿。ですが…アナゴンさん達。できることならあなた方にはこれだけは信じて欲しいのです。あの時私が誰のものとも知れない墓に花を供えたいと思った事…。その心までもウソだった訳ではないのです。私の心に人間だった頃の想いがよみがえり、自然にああせずにいられなかったのです」
姿は魔物でも、声は元のマチルダのままだった。
というか、このバケモノがマチルダだなんて、本人に目の前で変身されてもまだ信じられない気分だ。やっぱ実はこいつ別人で、本当のマチルダはそのへんに隠れてるんじゃないかとか思ってついキョロキョロしちまったくらいだ。
「そして…、この私に人間の心を思い出させたのが……ハンク、あなたの息子です」
だまれ!元凶が!!それ以上綺麗言を言うな!すぐにこの場に切り捨てるぞ!」
容赦ないハンクの怒声に思わず俺はビクっとする。相当殺気だっている様子だ。
それを受けてもなおマチルダは、静かな口調で続けた。
「……あなたの息子はあなたを助けるため、たった一人でこの塔まで来たのです。危険をかえりみず…。私が幼かった頃、死んだ兄を追ったのと同じように……」
マチルダのその言葉に、ハンクの表情が僅かに思案の表情になった。
「マチルダ……?そうか…どこかで聞いた名だと思っていた。お前は、死んでしまった村の英雄パルナの妹……」
妹…。
俺はハっとなって、思い出した。今朝の夢に出て来た兄妹の事を。
「兄を追った私は、あの方に捕われ…言い包められ……。そうしていつしか兄を裏切った村の人間を恨むようになっていたのです。心の迷いはやがてこの姿までも魔物のものとし……。
 ハンク……。あなたの息子には、私と同じ運命を背負わせたくありませんでした」

「英雄パルナの妹よ。息子との約束だ。お前に礼を言わねばならん。そして願わくば、お前を斬りたくない。…一度だけ言おう」
ハンクの言葉から怒気が消えていた。
「連れ去った女達を無事に村に戻し、この島を全て元の姿に戻せ。そうすれば息子とアナゴンどのに免じて命だけは助けてやる」
しかしマチルダは首を横に振る。
「…………………。それは、かないません。村の女達をこの世界に解き放つカギは……私の命。この命を断たねば、女達が村に戻る事はありません」
「そういう事なら遠慮はせん。斬らせてもらうぞ」
ハンクが剣を構える。
え、ちょっと。
「…覚悟の上です」
マチルダもそれに応じ、身構えた。
ちょっとってば、おい。

「…アナゴン!い……いいのか!?本当にマチルダさんと戦うのか!?」
「…どういう事?何なのよ、これは……」
俺にだってわっかんねえよ!
でも、ハンクもマチルダも本気だ。
戦わなきゃいけないのか?俺達は…。
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