採掘所に出る魔物達の撃退にも慣れ、俺達は薄暗い通路をどんどん奥に進んで行った。それほど複雑な造りでもないのでほとんど迷う事なく、順調に地下へ地下へと降りていく。途中色とりどりの大きなカラーストーンが行く手を塞いでいたが、このカラーストーンという奴は同じ色どうしをくっつけると割れ砕ける性質があるらしい。なのでそれを利用して上手い事そいつらを粉々にしていった。同じ色を並べるため移動させるのにちょっと頭を使ったが、パズルみたいでなかなか面白かったな。
やがて最下層に辿り着く。お、あれに見えるは緑のカラーストーン(残り一個)!俺達は駆け寄って、淡い緑の光を纏うそれを見上げた。
あったあった。来た甲斐があったなあ。よし、こいつの結晶を持って帰ればいいんだな。
とその時、こちらに向かって来る人影が。
「よかった。どうやら御無事のようですね」
先程別れたマチルダだ。なんつうか、神出鬼没な奴だなあ。
「あの後…。あなた達だけで奥に向かわれたのではと不安になり戻って来たのです」
いやあ、心配させちまったみたいだな。でもこの通り緑のカラーストーンも見つかったし、いいって事にしようぜ。
マチルダはさっきの事を詫び、自分も協力させてくれと言ってきた。
彼女が緑のカラーストーンに手をかざし意識を集中させると、そこから小さい破片がこぼれおちる。
「さあ、これをあの少年の所にお持ちください」
俺達は見事緑色の宝玉をゲットした。やりい!早速パトリックん家に戻るとしようぜ。
…と喜び湧く俺達に背を向け、マチルダは急ぐからとまた去って行く。忙しい奴だ。
するとふと何かを思い出したように立ち止まり、「これを預かってほしい」と俺に木彫りの人形を手渡してきた。何だこりゃ、やけにイビツだけど。
「その人形は…、私がまだ少女の頃兄からもらった物です。ずっとお守りとして大事にしてきたのですが…。今の私には似合いませんから…。気に入らないようなら、捨てて下さい。それでは本当に失礼します」
お守りねえ。彼女なりに、花のタネの礼でもしたつもりなんだろうか。こっちは世話になりっぱなしなんだから気使わなくてもいいのにな。まあ、くれるっつーもんは貰っておこう。
マチルダと別れた俺達はウッドパルナへと戻ってきた。相変わらず人生諦めムードがてんこもりで気分悪い村だな。気のせいか、最初に来た時よりそのムードが増してるように思える。ただでさえ野郎ばっかで滅入るってのに、どんどん暗くなってってどうするんだよ。
森の茂みの家へ。パトリックに緑の宝玉を渡すと、彼は早速それを父親の枕元に置いた。これでケガは心配いらないようだ。
そして俺達はパトリックからマチルダの事を聞いた。彼女は、一人で魔物と戦い傷ついたパトリックの父親を助け、魔物の巣窟である東の塔から家まで運んでくれた恩人らしい。
その夜俺達は、かろうじて壊されていない宿屋に泊まった。金はパトリックが払っておいてくれたので、タダで宿泊する事ができるのだ。いやマジで、めっちゃしっかりした子供だなあ。
「ぐおーーー…。ぐおーーー…。」
……それに比べてこの不良王子は。速攻高いびきで寝こけやがって。顔に枕のせたろか。
「ほんとキーファってばどこでもすぐに寝れるんだから。あたし、うらやましいわよ。」
まったくだ。どういう神経してるんだか。
「さてと、ムダ話はこのくらいにしてあたしもそろそろ寝ようかな。じゃあおやすみ、キーファとアナゴン」
ベッドに潜り込むマリベル。俺も自分のベッドに横になって、目を閉じた。
……………。
しばし続いた沈黙の後、マリベルが口を開いた。
「…ねえ、アナゴン。あたしたちってもしかして、このままもうフィッシュベルに帰れないのかな?アナゴンは家に帰れなくて、寂しくないの?あたしはもう……家に帰りたいよ。パパとママに会いたい……」
……。
俺は何も答えられない。マリベルはそんな俺を横目で見て、クスリと笑った。
「……なんちゃって、ウソよ。あたしがそんな事言うわけないでしょ。じょーだんよ、じょーだん。さっ、アナゴン。いつまでも起きてないで、あんたもさっさと寝なさいよ」
それきりマリベルは何も言わない。眠ったらしい。
…冗談の割にはいつもの威勢が全然なかったけどな。
夢を見た。
どこかの家の中。戦士らしき男が、戦いの準備をしている。
そいつの元へ、妹らしい小さな女の子が駆け寄った。男がやさしく問いかける。
「どうした?まだ何か言い残した事があるのか?」
「だって……。やっぱり一人で行くなんて危ないわ。行くのなら皆と一緒に行くべきよ」
心配そうな少女の言葉に、男は明るく笑ってみせた。
「はっはっは、そうしたいのはやまやまだ。だがな、すぐに誰かが行かなくては、またあの魔物を見失ってしまうかもしれない。まずオレがあの魔物を足止めし、村の皆が戦いの準備を整えてすぐに加勢してくれる。皆が力を合わせれば、魔物といえどもそれほど恐れる事はない。分かるな?」
「うん…」
「ではもう行くぞ。……おっとそうだ。お前にやろうと思ってこれを造った。ほら」
「これは…おにんぎょう?」
「見てくれは悪いかもしれんが、それでもがんばって作ったんだ。大切にしろよ」
その人形が、少女の心の中の不安を取り除いたらしい。彼女の顔がぱあっと明るくなった。
「うん!大切にする!おにいちゃん、ありがとう!」
「うん、それじゃあ行って来る。いい子にしてろよ、マチルダ」
………………………………。
朝が来ていた。
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