じっとしてても仕方ねえ、何でもいいから俺達に出来る事を探そう。さらに村の中を探索していたら、村外れの森の中に、人目から遠ざけるようにひっそり建っている怪しい家を発見した。
うらあ邪魔するぜ!
バターン!
「誰っ!?」
いきなり侵入してきた俺達に即座に反応したのは、中にいた一人の子供だった。
「な…なんだ……。人間だよね」
失礼な。人間以外の何に見えるってんだ。
子供は俺達を家の中に入れるとすぐさま入り口を閉める。
「驚かせてゴメン。この家が魔物に気付かれたのかと思ってビックリしちゃった」
何を警戒してんのかと思ったら、魔物か。ていうか初めて来た俺達でも簡単に見つけられたんだけどこの家。大丈夫かよ。
「ボクはパトリック。…そうだ!それよりお兄ちゃん達旅の人なんでしょ?だったらどこかでマチルダっていう女の人に会わなかった?」
会ったぞ。消えたけど。
俺の答えに、緊張気味だったパトリック少年の顔に笑みが浮かび、ホっとした表情になった。
「ホント!?ほっ……よかった。マチルダは今この村を魔物から守ってくれてる人なんだ。だけど最近姿を見せなくて……」
そうだったのか。村の人はそんな事一言も言ってなかったけどなあ。
それよかマチルダって、この村の人間じゃなかったのか?
「お父さんもケガをしてるこんな時にマチルダまでいなくなったら……」
パトリックはそう言いながら、部屋の隅にあるベッドに目をやった。彼の父親らしき人物が横たわっているのが見える。
その時、
「う…うああっ!!」
そいつが急に苦しみ始めた。あわてて駆け寄るパトリック。
「お父さん…大丈夫?キズが痛むの?」
父親に話し掛け懸命に落ち着かせようとしている。孝行息子だなあこいつ、まだこんなに小さいのに。どっかの不良王子とは大違いだぜ。
話を聞くと、パトリックの父親は村の戦士で、魔物に襲われた時に女達を守る為にたった一人で戦って傷ついたらしい。
「このケガを治すには緑色の宝玉の輝きが必要だってお医者様が言ってたんだけど…」
そりゃまた非科学的な医者がいたもんだな。
その緑色の宝玉とやらが手に入る南東の鉱山には魔物がうようよしているので、マチルダに頼んで取って来てもらおうと思っていたらしい。
マチルダと会ったらその旨を伝える事をパトリックと約束して、俺達は家を出た。
緑色の宝玉かあ…。
村人が言うには、南東の鉱山で取れる緑色のカラーストーン(何だかよく解らないが、宝石だと思っておこう)からこぼれおちる結晶のことで、ケガに効くためにずいぶんたくさん採掘されてきたものらしい。なので今取りに行ってもまだあるかどうか解らないらしい。
しかしなあ。どこでマチルダに会えるかなんてわかんねえしなあ…。
しばらく考え皆とも話し合った結果、俺達でそのカラーストーンを探しに行ってみようという事になった。うまいぐあいに見つけられたらラッキーだし、魔物との戦闘にも慣れておきたい所だし、ひょっとしたらマチルダにも会えるかもしれないし。
そして何より、じっとしてられないんだ。こんな見知らぬ地で、こんな体験した事もない状況で、なんか頭がどうにかなっちまいそうな状態で。何かしてないと気が落ち着かないったらない。
その気持ちが未知への不安から来るのか、それとも期待から来るのかはまだ解らないけどな。
というわけで俺達は手始めに、持ち合わせで適当に武器を買って村の回りで戦闘の訓練を積んだ。つってもただ殴ったり刺したりするだけだけど。とにかくちっとは強くならないと。今の状態でいきなり鉱山に入っていくわけにはいかない。
…と、ここで俺は初めて気付いたんだが、いつの間にかなくなっていたと思っていたキーファへの佃煮は何故かマリベルが持っていた。 いつ渡したんだか全然記憶にないぞ。おかしーなー。
仕方ないので、それはキーファの道具袋に突っ込んでおいた。
スライムとか踊るナスとかデカいイモムシとかを相手にどんどん経験を積んでいく俺達。それなりに力もつき、いいかげんちまちま戦うのにも飽きて来た頃、武器を買い替えていよいよ鉱山に踏み込んでいったのだった。
南東にあるカラーストーン採掘所の鉱山は、見張りはいるものの誰も利用してはいないらしい。魔物のせいなんだろう。
中に入ってみると、外で遭遇したのとは違う魔物が出た。数も多い。
唇の化け物みたいな魔物をブっとばしながら奥に進む。すると見覚えのある後ろ姿……。マチルダだ。
「アナゴンさん達、またこんな所で御会いするとは…」
まったくだ。本当にいるなよ。
ここに魔物の気配を感じて来たんだそうだが、探す手間が省けて好都合だ。早速キーファがパトリックの願いをマチルダに伝えた。
それを受けたマチルダは、
「そうですか…。あの少年が父親のために緑色の宝玉を…」
呟いたかと思うと、採掘所の出入口に向かって歩いていってしまう。
そんな彼女に、マリベルが非難の声をあげた。
「…って、マチルダさん!パトリックの頼みは聞いてあげないの!?」
マチルダは立ち止まり、振り向いた。
「…冷たいと思われるかもしれませんが、私もあの少年だけにかまってはいられないのです。では……。」
そして今度こそ去って言ったのだった。
「う〜ん、マチルダさんって本当に冷たいかもなあ」
キーファが洩らす。
まあ、そうかもしんないけどな。でも、村全体を守らなきゃいけないのにたった一人の子供の面倒なんか見てられないってのも解る気がする。
何にせよ、行っちまったもんは仕方ないか。カラーストーンは俺達だけで探すとしよう。
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