ドラクエ7冒険記 <さくさくDQ劇場

FILE:12「あっという間に知らない世界」
「……アナゴン、マリベルも大丈夫か?」
キーファの声で目が覚めた。 頭を摩りながら身体を起こす。
……あいててて。何が起こったってんだ。
辺りを見回すと、そこは暗い見知らぬ森の中だった。さっきまで神殿の中にいたのに、なんで外になんか出てるんだろう。
…という俺の思考はマリベルの怒声により遮られた。
「大丈夫なわけないでしょ!なんだったのよ今のは!?」
「さあ…?あの神殿にいて、何かが起こったのはたしかだけど…。
 そういえば……見た事のない場所だな。島にこんな所があったか?」

キーファの言葉に首を振る俺。エスタード島はガキの頃から奴と一緒にさんざん走り回った島だが、こんな場所になんか来た事もない。完成したあの石版が、俺達をどこか知らない場所に飛ばしたのだろうか。
しかしマリベルはそんな俺の意見に耳を貸さない。相当機嫌が悪いようで、目を三角にしてまくしたてて来た。
「何言ってんのよ。あったに決まってるじゃない。現にこうしてあるんだし。
 …にしても、どうしてここってこんなに空が暗いのよっ!?それでなくても気分が悪いのにもうホントにサイテーな気分だわ」

あー、確かに暗いな。…でもなんか、変な感じがする。夜の暗さとは何か違うような気がするんだよなあ。
「…さてと。じゃああたしは家に帰るからね。
 アナゴン、キーファ、遊んでくれてありがと。つまらなかったわ。じゃあね

ほんと、どう生まれ育ったらこんな憎まれ口がさらっと出て来るんだろう。逆に感心してしまっている俺とキーファを残してマリベルは去っていった。ていうかどうやって帰るつもりなんだろうな。
「さて…オレたちもいつまでもここにいても仕方ないしな。行こう、アナゴン」
ふう…。そうするか。


森の中を二人で進んでいると、
キャーーッ!!
突如響き渡るマリベルの悲鳴。声がした方に走っていくと、マリベルが何やら水色のゼリーみたいな物体に行く手を阻まれてるじゃないか。何だ何だ??
「な……何なんだ!?このヘンな生き物はあ!」
うろたえるキーファとマリベルは放っておいて、俺はそのゼリーをよく観察してみた。太った水滴のようなフォルムに空ろな目、そして常に笑っているように開かれた口。ぷるぷる震える身体………。
可愛い。
何ていうんだろーなこの生き物。捕まえて飼っちゃダメかな。
なんて事を考えてたら突然、
ぶよん。
ゼリーの一匹が突進してきて、キーファに体当たりをかました。元気だな。
「アナゴン!あ…あんた、どうでもいいから早く何とかしなさいよっ!」
えー、やだ。
そんなちっこい奴がぶつかってきたくらいで何だ。お前より可愛いからって嫉妬はいかんぞ、嫉妬は……
ぶよん。
今度のそいつらの体当たりは、俺の顔面を直撃した。
………。
行くぜ野郎共!!!!


俺達3人でボカボカ殴りまくって、やっと3匹のゼリーは動かなくなった。
「な…何なのよ!ここは!どうして魔物なんかがいるのよ!」
ヒステリックに喚き散らすマリベル。キーファが敏感に反応する。
「魔物…今のが魔物なのか?」
「じゃなかったら今の薄気味悪い生き物は何だっていうのっ!?」
俺は可愛いと思うぞ。倒したけど。
「とっ…とにかくっ!こんな事になったのは、あんたたちのせいだからねっ!あんたたちがムリヤリあたしをこんな所に連れて来たからいけないのよ!」
……お前、本当に凄いよな。あまりに凄すぎて怒る気にもならねえよ。
「アナゴン!あんたちゃんと責任をとってあたしを無事に家まで送り届けるのよ!!」
「魔物……」
キンキン響くマリベルの声なんかまったく耳に入っていない様子でキーファは呟いた。そして次の瞬間いきなり飛び上がって、
「お…おい!アナゴン!ちゃんと見たよな!今のは本物の魔物なんだぞ!
 クゥ〜〜ッ!なんだか知らないけどワクワクして来たぜ!

俺の肩をつかんでガクガク揺さぶりながら興奮気味にこう言った。分かった、分かったからもうちょっと落ち着け!
…駄目だ。目が完全にいっちゃってら。
生まれて初めて目にした魔物の姿に感動するキーファにマリベルはついにブチ切れた。
バカッ!どうしてこんな時にあんたは喜んでんのよっ!とにかくあたしはいつまでもこんな所にいたくないわ。さっさとあたしを連れて家に帰るのよ!いいわね!

……ハア。
まだ興奮覚めやらぬキーファと膨れっ面のマリベルを連れて、俺は暗い森を道ぞいに歩いていくのだった。
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