あー、くそねみー。疲れた。腹減った。誰か俺の身体を支える杖をくれ。歩くのもしんどい。
俺はフラフラになりながらフィッシュベルへの街へと帰って来た。すると街の中がなんだか賑やかだ。
…ああ、アミット漁に行ってた毛玉親父達が帰ってきたのか。
どうやら大漁だったらしい。捕れた魚の山を、街の人は皆嬉しそうに眺めている。へえ、こいつはすげえや。こんな大漁見るの初めてだわ俺。
まだ船に親父がいるかなーと思って港に行ってみたが、もう家に帰っているらしい。それと、おかしなものが網にかかったとかで、親父がそれを持っていると聞いた。
おかしなもの……。
いや、まさかとは思うが。
家に帰って聞いてみよう。ついでに、今頃お袋が捕れたての魚で飯でもこさえてる事だろう。それ喰って寝ちまおうっと。
ただいまー。
「おや、お帰りアナゴン。でもごめんよ、お前のぶんの料理がもうないんだよ」
ガーーン!
「父さんの弟のホンダラさんがまた来て、お前のぶんまで食べちゃったもんだから。めずらしくお酒なんて持ってきたかと思えば自分でみんな飲んじゃうし。まったくしょうがない人だわ!」
みると、ホンダラの奴が人ん家のベッドにふんぞり帰って眠っている。
こ…このくされ毒マムシが!死んで償え!!
怒りに身を震わせる俺とは対照的に、親父は上機嫌だった。
「今年の漁は潮の読みが思いのほかうまくいってな。これほどの大漁はたしか10年以上も昔の、お前が生まれたあの年以来だ。いや、あの年は今年以上だったかもしれんが」
へー。あ、そ。
ハラワタが煮えくり返っている俺にとっては、親父の喜びトークは毒意外の何ものでもない。つうかアンタどうにかしてくれよあの厄病神…。
「漁からもどってみるとお前が生まれていたんでそっちの方に気をとられちまった。たった6ヶ月で生まれたのにケロっとしてて、オレの顔を見たらいきなり泣き出したっけな」
いつの間にか思い出話になっている。ほんと、めちゃめちゃ機嫌よさそうだ。
ああ、そういえば親父、何か変なの拾ったんだって?
「おお、そうそう!忘れる所だった。網にまぎれてきたんだが、おかしなものを拾ってな。ええと…、何か古い石版のようなものなんだが、一応お城に報告した方がいいかもしれん」
と言いながら親父が取り出したのはまぎれもなく、黄色い石版のかけらだった…。
なんていう偶然。ていうか御都合主義。いいのかこんなんで!
「確かお前王子と仲が良かったな。よし、これはお前にまかせる事にしよう。頼んだぞ」
うひー。マジ??
そんなわけで、あの台座にはまる最後の石版はこうやって俺の元にやってきたのだった。
キーファに知らせなくちゃな。ただし寝てから。
冒険の続きより俺の体調のほうが大事だ。クソ叔父ホンダラに壷の一撃をかますと俺は2階にあがり、ベッドに横になって眠った。あー。丸一日、マジでいろんな事ありすぎて頭も身体もパンクしちまいそうだ……。
眠りから覚めた俺は石版のかけらを手にグランエスタードの城下町にやって来た。アミット漁が無事に終わって新鮮な魚が食べられるという事で、この街の人達も喜んでいる様子だ。
城に入る前にガケじいに昨夜の報告をしたら、まるで自分の事のように喜んでくれた。なんでもガケじいは若い頃、今のキーファみたいに遺跡の謎を解こうと島中を走りまわっていたらしい。成る程、だから協力的だったわけか。
「今日の朝食は王様の大好きなお魚。だからきっと久しぶりに御家族揃ってのお食事になるわね」
ばーい城のメイド。あっちゃー、キーファに石版見せちまったら絶対、速攻飛び出しちゃって食事どころじゃなくなるぞ。なんかそれ王様とリーサ姫に悪いから、今日の所は石版の事は黙っててキーファには挨拶だけしとくか…。
というわけでキーファの部屋。
「ようアナゴン、なにか解ったかい?」
いや、特に…。
「…ってお前!お前が手に持ってるのって……石版じゃないか!!」
し…しまった!!我ながら最強のボンミスをかましてしまった!
見つかっちまったものは仕方ない。俺はキーファに石版入手の経緯を話した。
「そうか!これは凄い偶然だぞアナゴン!!」
うん。俺もそう思う。
「もうこうなると運命を感じずにはいられないな!」
認めたくないけど。偶然にしちゃあ出来すぎだしな。
「行こう、アナゴン!今すぐあの謎の神殿へ!!」
なんでいきなり倒置法。
でもなあー、せっかく家族揃っての朝飯なんだろ?
…という俺の気づかいは全然無用だった。王様は朝飯の魚が楽しみで仕方ないらしく、キーファの事は頭に入っていない様子だ。つい昨日まではあんなにギャーギャー言ってたのに。たかが魚で機嫌が治っちまうなんて、よっぽど好きなんだなあ。
ああ、気ぃ使って損した。さっさと行こ行こ。
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