「いつもの場所」が分からない俺は結局またグランエスタードに行ったりと、あっちこっちウロウロしまくっていた。フィッシュベルにもグランエスタードにも奴はいない。…となったら、あの遺跡にでもいるのかなあ。とにかくもうそこ意外に心当たりもない。行ってみるか。
この島の東には不思議な遺跡がある。いったいどのくらい昔に、何のために造られたのかはまったくわかっていない。城の学者は「王家の墓」だとか言ってたけどな。
そこにはいつも薄い霧がたちこめていて、崩れかけた壁が囲むその中には一体の賢者の像、そして開かずの扉が佇んでいる。敷地の一角にある石の蓋をはずすとそこから地下に通じていて、潜ると7色の水をたたえた綺麗な入り江に行く事ができる。
キーファいわく、「この遺跡には何かある!」らしい。奴はその謎(と言ってはいるが本当に謎があるのかは不明だ)を解きあかしてやろう!と毎日俺を振り回しながら奔走しているのだ。「何か」が何なのか見当もつかないまま実に楽しそうにな。
ちなみにキーファは18歳。はっきりいってもう子供ではない。にもかかわらずこんな冒険ごっこにはしゃいでるのだ。王様が心配するのもうなづけるってもんだ。
遺跡に着いた。賢者の像の所にキーファはいた。
「おっ、アナゴン。やっと来たか。お前一人でここへ来れるかちょっと心配だったんだ」
馬鹿にすんな。ていうか俺はお前のせいで城に呼び出されて大変だったんだぞ。王様がなあ…。
「おっと、そんな事よりこれこれ!これを見てくれよ!」
聞けよ、人の話。
俺の言葉を無視してキーファはずずいっと、一冊の古い本を目の前に突き付けた。なんだこりゃ、王家の古文書だって…?
開いてみるとそこには、太陽のような光をたたえた杖を持つ賢者の絵、そして何やら石版のような絵が描かれていた。俺に分かるのはそのくらいで、あとは何て書いてあるんだか分からない古代文字がずらずらと並んでいる。
「どうだアナゴン!そこに描かれた賢者の絵はここにある像にそっくりだろ!? ずばり!この像に何かをすれば何かが起こる!ってことだぜ!」
いつもの事ながら、お前のその自信はどっから来るんだよ。だいたい「何か」って何なんだよ。
「その絵を見るかぎり、キーワードは太陽だ。そこでこいつの出番ってわけさ。 じゃーん!これこそわが王家に伝わる宝珠、太陽石の指輪!」
いいから落ち着け。
ってそれ、さっき王様が言ってた「妃の形見の指輪」なんじゃないのか?!ったくお前なあ…
「こいつをこの像のどこかにはめれば、きっと何かが起こるはず!」
聞けっつの!
俺の渾身のツッコミをものともしないキーファは、賢者の像の周りを調べはじめた。
「おっ、この杖の先が怪しいな。よし!それじゃここにこいつをのっけるぞ。いいな、アナゴン」
だめ。
「なんだよ、おじけづいたのか?この遺跡の謎を二人で解きあかすって約束したろ?」
したっけ。
「わかったよアナゴン。お前がそんなに臆病だとは思わなかったよ。もういいからお前はそっちにさがってな。オレひとりでやるから……」
けっ。勝手にしろ。
「……と。それとも気が変わったか?」
変わんねーよ。
「わかったよアナゴン。お前がそんなに臆病だとは思わなかったよ。もういいからお前はそっちにさがってな。オレひとりでやるから……」
勝手にしろっての。
「……と。それとも気が変わったか?」
しつけーな!何だよお前一人じゃできねーのかよ!!
「わかったよアナゴン。お前がそんなに臆病だとは思わなかったよ。もういいからお前はそっちにさがってな。オレひとりでやるから……」
だから一人でやれってばよ!
「……と。それとも気が変わったか?」
ああもう分かったよ!付き合ってやるよ!!
「よーし!そうこなくっちゃ!」
こいつ……。佃煮ぶつけたろか。
ってあれ、俺佃煮持ってないぞ?袋にも入ってないし、城の誰かに渡した記憶もないし、どこいったんだろう。
首をかしげる俺を後目にキーファは一人、像の前でつぶやいでいる。
「何が禁断の地だ…。何が王家の墓だ…。そんな言葉で終わらせて、それ以上研究しなかった学者達は怠慢だよな。オレはずっと思っていたんだ。この遺跡はそんなものじゃなくて、別の何かがあるって…。それも、オレの運命を変えてしまうような何かが…」
キーファの瞳の意志が増す。こいつの中にはいつもこんな情熱がたぎっているのだ。
もっともそのたぎる情熱のせいで俺の運命まで変わってしまってはたまったもんじゃないのだが。
「よし、いくぞ!」
キーファは像の持つ杖の先に、太陽石の指輪を置いた……。
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