さて、親父の船も無事航海に出発した事だし。家帰って寝よ。
と、さっさと家に引き返そうとした俺はいきなり呼び止められた。グランエスタード城の兵士じゃないか。
「王様が何としてもアナゴンどのと話したいと申されて…」
王様が?
兵士の言葉に少なからず驚く俺。てっきりまたキーファの奴が俺を呼び出そうとしたのかと思ったんだけど…。王様がか。珍しいな。
キーファってのはここグランエスタード国の王子で、俺の幼馴染みその2だ。王子とはいってもそれを鼻にかける事はなく、誰とでも対等に付き合う気持ちのいい奴…なんだが、それも度を越すとだたの問題児。今だに王族という自覚を持たず、毎日好きな事(主に冒険もどき)をして過ごしている困った王子だ。…まあ、俺も面白半分で付き合って一緒に遊んでるから人の事も言えないんだけど。
王様が俺を呼び出した用ってのもきっとキーファの事なんだろう。…行きたくないけど、行かなきゃ駄目だろうなあ…。仕方ねえ。
ちなみに、俺みたいな超平民風情が王族に呼び出されるなんて事は、この島ではごくありふれた日常だ。島の人間全てが親戚みたいなもんだからな。
「フフフ…。聞いたわよ、アナゴン」
はう。
突如背後から聞こえたマリベルの笑い声に俺はギクリと振り返る。彼女は腕組みの姿勢で俺の顔を見ながらこう言った。
「またお城へ呼ばれたのね。あたしも一緒に行くわ!いいわよね?」
やだ。
「さっきはあんたのせいで船から出されちゃったのよ!このくらい諦めなさいよ」
だってあれはお前の
「さあ、行くわよ!」
………。
有無を言わさずマリベルが仲間になった。まったく、オバンとマリベルには逆らわない方がいいっていうか逆らえねえよな。
ちょっと自分が情けない。
城に行く前に家に寄ったら、お袋からキーファへ渡す佃煮を預かった。
王子のくせに、こういう庶民的な食い物好きなんだよなあアイツ。
ピーピーうるさいマリベルを引き連れてグランエスタードの城下町を目指す。
ったくこの女、何にでも首を突っ込みたがるんだよな。最近じゃキーファと俺が2人でつるんで遊んでいるのが気にいらないらしく、俺達の行動を嗅ぎ回ってばかりで鬱陶しい。そういや昨日なんか、夜中に呼び出されて問いつめられたっけなあ。
などと考えながら歩いていたらいつの間にかグランエスタードに着いていた。この小さな島の中心とも言える、グランスタード城がそびえ立つ城下町だ。とはいっても荘厳な雰囲気などほとんど無く、フィッシュベルと同じくらいのどかな空気が漂っている。
マリベルは用があるからと、さっさと町のどこかへと消えていった。一人になった俺は、王様に会う前に街の皆に挨拶でもしておこうと思い、目についた人に片っ端から話し掛けていった。
そして勿論、目についた民家に片っ端から上がり込んで家捜しをしていったのだった。
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