ドラクエ7冒険記 <さくさくDQ劇場

FILE:1「アナゴンダダダ」
俺の名はアナゴン。なんでこんな間抜けな名前なのかというと、親父が穴子寿司が好きだからという理由で名づけたかららしい。迷惑な話だと思わなくもないが、まあいい。俺も好きだし。
趣味は壷とタルの破壊および家捜し。ピチピチの16歳で、男性ホルモンの塊みてーな親父とは似ても似つかない、あどけなさの残る美少年だ。何か文句あるか。とにかく、こういう事を恥ずかしげもなく平気で言うキャラだと覚えてくれればいい。
島国エスタードにある港町フィッシュベルに、親父のボルカノとお袋のマーレと3人で住んでいる。親父は腕のいい漁師だ。だから俺もいつかはその後を継いで漁師になったりするんだろーなとは思ってはいるが、実感はあまりない。まあ、自分の進む道がはっきり決まるまでのんびりとやるつもりだ。


ある日の朝。俺はお袋にたたき起こされて、これから漁に出る親父のところにサンドイッチを届けにいかされた。まったく、歩いてすぐの距離なんだから自分で行けよってんだ。とは思いつつも俺は素直に引き受ける。「オバンには逆らわない方がいい」というのは、16年間の人生の中で俺が学んだ事のひとつだ。
今日はアミット漁の日だけあって、ここフィッシュベルの人達は皆どこか浮かれている。ただその年で一番始めに船が漁に出る日ってだけなんだけどな。まあ、他に娯楽のある街でもないし。

親父にアンチョビサンドを届けると、船が出るまで船内の手伝いでもしてろと言われたので船に乗り込んだ。でも何を手伝ったらいいか分からなかったんで、タルを壊したり宝箱を開けたり(空だったが)して遊んでいた。そしたらタル置き場に人影が見えるじゃないか。周りのタルを全部ブチ壊して話し掛けてみたら、そいつは幼馴染みのマリベルだった。
マリベルは網元の娘。分かりやすく言えば、俺の親父の上司の娘だ。ワガママなお嬢様…つってもド田舎のお嬢なので全然大したもんじゃないけど。なんて間違って口に出そうものなら俺の身が危ういので言わない。…まあ、そういう女だ。
「シーッ!大きな声で話し掛けないでよっ。あたしがここにいることバレちゃうじゃないっ!」
いや、最初からバレバレなんだけど。
ていうか密航か、甘いな。隠れるんだったらタルに変装するぐらいの事はしろよな。もっともその場合、俺に投げ壊されて大怪我だっただろうが。
だいたい俺だってまだ漁に出させてもらえないんだ。網元の娘だからってそんなワガママは通らないだろうよ。
「あれ?そこに誰かいるのか?」
話し声に気付いたのは船のコック長だった。慌てて後ろを向くマリベルを見て、呆れ顔で言う。
「ややっ、マリベルお嬢さん。またそんなところに隠れたりして…」
常習犯かい。
「もう…いいじゃないの。あたしが漁について行ったって!
 ね、見のがしてよコック長!あなたの作るシチューって最高よ!ウフフ…」

「わたしにお世辞を行ってもムダですぞ。さあ、お父上に叱られないうちに船を降りなされ」
コック長はマリベルのおねだり攻撃をさらりとかわして厨房に戻っていった。
マリベルは俺の顔を、ありったけの非難と恨みのこもった目でギロリと睨み付ける。うわ怖っ!般若みてえ!
きい〜〜っっ!なによアナゴンのバカっ!あんたとキーファ王子の秘密の場所、バラしちゃうからっ!!」
憎まれ口を叩きながら俺を突き飛ばすと、マリベルは船室を出ていった。まったく仕方のない奴だ。
…なんて事をやってたらいつの間にか出航の時間になっている。俺は結局何も手伝わないで船を降りる事になった。
晴天の下、船は村の人々の歓声に見送られながら勇ましく漁に出ていった。


やれやれ。お祭り騒ぎはこれで終わりだ。あとはいつもと同じような日常がゆっくりと過ぎていくだけだ。なんとなくホっとしたような気分で海を見渡し、それから晴れやかな空を仰ぐ。
このフィッシュベルの街と、南西にあるグランエスタードの城下町。北東にある謎の遺跡…。この島にはこれだけしかない。そしてこのエスタード島を囲む果てしない海。それらが、俺たち島民にとっての「世界」の全てだった。海と、俺が住む島以外には何も存在しない。
当たり前だと思っていた。俺はこれからもこの「世界」で、 平穏で何もない日々をのんびり過ごしていくのだと思っていた。

…あいつが、あの「冒険」とやらに俺を巻き込むまではな。
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